星を超えた想いを15【オリオンの刻印】 (ページ33)

今日:19 hit、昨日:2 hit、合計:322,428 hit

救護班ページ33

❀

監督が要請した数人の救護班は、医療用具と

救急箱、コールドスプレーなどを片手に

フィールド外に腰を下ろして、数人の

選手に取り囲まれていたAの元へと到着する。

「よろしくお願いします」

そばに寄り添うように立っていた野坂が

救護班にそう言うと、救護班は頷いて

Aの前に向かい合うように膝をつくと

腫れ上がった手を触り、状態を確認する。

「痛むかい？」
「は、はい………ぁ、っ！」

外から見ただけでは折れているかどうかわからないため、救護班の一人が痛めた部位をそっと押してみると、Aは圧痛に見舞われる。

救護班の一人がその隣でその様子を

観察するようにメモを取っていると

Aの手を触っていた救護班が救急箱を

持っていた仲間の一人に相槌を打つ。

その人物はその合図を受けた途端救急箱を

地面に置くと、どこかへと走っていく。

「彼女の容態はどうですか」
「…………骨に異常があるかもしれません」

野坂が走っていった救護班の一人を

一瞥した後に、Aの手に触れていた人物に

そう問いかけると、彼は苦々しい表情で答えた。

「骨折、ですか？」
「レントゲンを取らない限り、こちらでは何とも」
「そんな……」

頬に冷や汗をかく野坂の隣で、明日人は顔色を真っ青にして治癒を行われているAを見下ろす。

「しかし、今の状態を見る限り腫れ上がっている部位に熱がこもっているので、一先ず、熱を冷まして、テーピングで固定するのが無難でしょう」

痛むかもしれませんが…………、と

付け足した救護班のリーダーが

「大丈夫かい？」Aの顔色を

窺うように優しく声をかけるとAは

痛みで片目を閉じながら首を縦に振った。

「他に痛むところや、傷はありますか？」
「えっと……足を少し擦りむいて……」
「見せてもらえる？」

こくん、とAが頷くと今までメモを

取っていた救護班の一人が「失礼します」と

言ってAのソックスを下へとずらした。

膝小僧や、向こう脛に所々、倒れた際にできたであろう擦りむいた擦り傷がいくつか見られた。

よほど派手な転け方をしたのだろう、と

救護班員はそう思いながら救急箱から

消毒液とガーゼを取り出す。

「少し染みますよ」
「は、はい……………」

ぷしゅ、という音と共に傷口に消毒液が

あてられ、びくっと肩をビクつかせていると

不意にAの右隣に立っていた野坂が

膝をついて、彼女に視線を合わせるように屈んだ。