月光丸・燕返し ページ21
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アナハンからのスライディングを交わして
飛び上がった野坂はするりと横目を移動させて
フィールド外にいるAと視線を交わらせると
どちらからともなくゆっくりと頷き合った。
そして、フィールドに着地した野坂は
膝に乗せたボールを勢いよく蹴りあげると
そのままシュート体勢に入る。
蹴りあげたボールは月のように明瞭な光を
輝かせて、地上で構える野坂を照らしつける。
光輝く
白さで浮かびあがり、ボールは月から
送り込まれた使者のように
月の光を浴びながら野坂の元へと舞い降りる。
そして、野坂は構えていた剣を抜くような
素振りを見せると勢いよく飛び上がり
月の光を浴びたサッカーボールを斜め上から
叩き込むように遠い間合いから右足の踵で
鋭い蹴りをボールへと打ち込んだ。
「月光丸・燕返し」
神々しさを放ちつつ、野坂悠馬その者を
連想させるかのような美しくも儚さを背に持つ
新たな必殺技「月光丸・燕返し」は見事
ウズベキスタンゴールを刺し貫いたのだった。
《ゴール！
野坂悠馬、復帰早々、華麗に得点を決めた！》
沸きあがる喜びに身を任せるかのように野坂は
シュートを見事決めると、ガッツポーズを決めた。
そして、両腕を横に広げながら、普段は
見せることの無いような満面の笑顔を
顔全体に浮かばせながら、そのまま
フィールドを駆け回り、バク転を繰り返す。
華麗に着地を決めて、ウズベキスタン側の
白線外で立っているAの元まで歩いて行くと
野坂は刀を腰の鞘に差すような仕草を見せながら
頭をゆっくりと下げて、少女の前に跪いた。
数拍置いてから頭を上げた野坂は口元に、明け方の三日月のような笑みが浮かばせてAを見上げた。そしてAもまた、気恥しそうに頬を赤らめながら野坂の笑みにつられるように口元を綻ばせた。
暫く二人の視線は絡み合うように何も語らず
何も言わずに交わっていた。
しかし野坂の両サイドに、明日人、風丸が
従者のように同じくして跪くと、Aは
思わずはっとして、野坂から慌てて
目を逸らすと、熱くなった頬に両手を添える。
そして、見事な必殺技とゴールパフォーマンスを見せてくれた野坂と、連携プレーを見せた風丸たちにも観客達から盛大な拍手と歓声が送られた。
(もしかして俺たち邪魔したか？)
(そ、そんなことないです！)
(その割には顔赤いけどな)
(や、やめてください風丸さん！)
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作者名：小雪
| 作成日時：2018年12月16日 18時
