星を超えた想いを15【オリオンの刻印】 (ページ19)

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雨宮太陽(回想) ページ19

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ふっ、と口角を上げた野坂は、ボールを

手に持ったまま雲ひとつない空を見上げた。

「(人よりも力が劣ろうと僕は走りたかったんじゃないのか？ボールを蹴りたかったんじゃないのか？)」

FFが終わったあの日、決意した自分の気持ちを

呼び覚まそうと野坂は自らに自問自答を繰り返す。

「(戦術の皇帝じゃなくてもいい…………
僕はただ"サッカー"をやっていたいんだ)」

そしてそのまま、野坂は、ふっと瞼を閉じる。

___「私は野坂くんのこと、もっと知りたい」___

「(僕のことをちゃんと知ってもらいたい。

僕のプレーを見て、感じて、あの時

聞けなかった答えを、ちゃんと聞きたい…………)」

無謀な告白だと分かった上で言った言葉も

Aはちゃんと親身になって受け止めてくれた。

同時に、日を重ねるごとに自分の事を

意識をしてくれるようになってくれたのが

野坂は心が弾むように嬉しかった。

「(そうだ…………

こんなところで立ち止まるわけには行かないんだ)」

野坂は、手におさめていたボールに力を込めて「どうしたの？」と急に何も話さなくなった野坂を心配して顔色を窺う太陽を見下ろした。

「キミのおかげで気づいたよ………

何をクヨクヨしていたんだろう。今の僕はね

サッカーそんなに上手くないかもしれない」

崇高な目的のためなら、手段は問わない。

それが自分のポリシーであり、皇帝としての

自分の在り方だった野坂は、そこで初めて

自分の弱さと儚さに気づいた。

同時に、胸の奥に沈めていた頑丈に閉ざされていた心の扉が音を立てて開いたような気がした。

「でも…………僕もキミと同じように

サッカーが好きだ…………大好きだ！

だから、僕もまだサッカーを諦めたくない！」

自分の気持ちをさらけだして、野坂は

ボールを抱きしめて太陽に胸の内を明かした。

最初は、ぽかんと口を開けていた太陽だったが

すぐに陽だまりのような笑顔で頷き返してくれた。

「…………キミ、名前は？」
「太陽！雨宮太陽！」
「そっか……名前負けしてないいい名前だね」

えへへ！と褒められて嬉しいのか、太陽は

照れくさそうに鼻下に人差し指を

擦るように当てながら笑った。

「それで、太陽くん。Aちゃん…………

日暮Aに何か伝えたいこと、あったりするの？」

「えっ…………う、うん。もちろんあるよ」

太陽と同じ目線に屈んでそう言った野坂に、太陽はきょとんとした表情で野坂からボールを受け取る。