星を超えた想いを13【オリオンの刻印】 (ページ10)

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風丸のお悩み相談4 ページ10

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それぞれの特訓メニューもいよいよ終盤に

差し掛かっているのか、選手たちの中には

「あと一周で終わりだ」と

走り込みをしていた者のそんな声が聞こえる。

_____そして、ベンチでは

「だからお前、あの時俺にあんな確認をしたのか」

Aが今まで胸の内に閉ざしていた

悩みを風丸の前ではじめて打ち明けると

彼はAの昨晩の当たり前の質問に

合点がいったという風に納得した様子で呟いた。

「でも……FFとか他校の人達とのことはちゃんと覚えてて、食い違うことはないんです。断片的な記憶が書き換えられてる、みたいに感じて……」

一概に記憶が間違っているとは言えないため、何が正しくて何が間違いなのかすら自分の記憶ではあまりにも不十分すぎて役に立たない。

顔を俯かせた彼女の髪の隙間からは

愁いを帯びた瞳が悲しそうに揺れていた。

「記憶が書き換えられる、か。にわかに信じ難いが……でも、お前を見る限りそうとも言えないな」

顎に手を当てて、落ち込むAを一瞥した

後に、サッカーコートで剛陣のシュートを

受け止める西蔭を視点に置く。

「お前はどうしたいんだ、日暮？」

「えっ……」

俯かせていた顔を上げて、風丸を見上げるA。風が二人の間を吹き抜けて、風丸の隠れていた片目が露わになり、その綺麗な瞳に見つめられる。

「一時的な記憶障害なら、記憶が戻ってから

謝る選択肢ももちろんある。だが………

それは、お前が決めることであって

俺がどうこう言える立場じゃない」

あくまでこれは、当事者同士の問題だ。

自分はサポートをする立場であり

口を挟める立場ではない、その事をちゃんと

理解した上で風丸はAと真剣に向き合う。

「……日暮、お前自身はどうしたいんだ？」
「私、は…………」

真っ直ぐな瞳で見つめられ、真剣な表情で

見下ろされる。風丸と、こんな風に

対面したことはなかったAは

その瞳から目を逸らせないまま

固く閉ざされた唇をゆっくりと開いた。

「謝りたいです。ごめんなさいって、無責任で、簡単で、自分勝手で、自己保身だと思われるかもしれない……けど、それでも私！西蔭くんに向き合って、ちゃんと謝りた…………んっ」

そこまで言いかけると、ぴた、と唇に

何かがあたり、Aの言葉は、途中で

中断されてしまう。

唇に温もりを感じてその視線をゆっくりと辿ると

風丸がAの前に屈んで、右手の人差し指を

彼女の唇にあてがっていた_____。