ミートソース ページ43
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ミートソースついてますよ、そんなことを
言われて数秒が経った…………自分で
拭うつもりでいたAが口元に人差し指を
当てようとしたら、何故か掴まれて
一星に顔の距離を詰められている。
「あ、あの一星くん！
ミートソースくらい自分で拭けるか……っ!?」
その時、後頭部に違和感を感じて何かに引き寄せられた途端、Aの視界が真っ暗になった。
何をされたのか分からず、ただただ目を瞬かせていると、唇の端にざらっ、とした感触を感じた。
気づいた時には唇にその感触は消えていて
一星は満面の笑みで微笑んで、斜め前にいた
西蔭に挑発的な眼差しを向けていた。
「(なに…………今、の)」
がたん、と左のテーブルから音が鳴って、Aはぼーっとした顔のままそちらへと目を向ける。
すると恐らくその音を立てたであろう張本人
明日人が一星たちを見つめたまま
顔を真っ赤にして、目を泳がせていた。
彼の手から滑り落ちたであろうフォーク。
それが全てを物語っていた。
「やっぱり先輩のミートソース美味しいです」
その声に反応して、隣にいる一星に視線を
戻せば、一星はぺろっと舌を出して
「ごちそうさまです、先輩」と笑ってみせる。
明日人の赤面、一星の言葉、それで全てを
察したのか、Aは下から上へ火山のように
真っ赤に染め上げていくと噴火したような
音を立てて声にならない声を上げた。
左隣から「どうかしたのか明日人？」という
氷浦の声と明日人の
「な、なななな何でもない！」という
会話が聞こえて、幸い明日人と西蔭以外の
者には見られていなかったようだ……
「な、何してるの一星くん！！」
「何って、舐めただけですよ？」
ね？西蔭さん、と火種を撒いていくような事をする一星にさーっと顔を青ざめさせるA。
西蔭の顔が不快そうに顰められていき「野坂さんが知ったら……」や「野坂さんはやはりこの女に騙され……」など独り言を呟き始めた。
「それに先輩、今更こんなことで恥ずかしがらないでくださいよ、舌を噛み合った仲じゃないですか」
水臭いですよ、と頬を膨らませる一星。
可愛くない、全然まったくもって可愛くない。
「ばっ……ばかっ！何言ってんの!?」
西蔭の前でとんでもないことを暴露した一星に
観覧車でのあの出来事を思い出してしまった
Aは百面相をしながら慌てふためく。
(あの時の先輩、すごく……)
(一星くん黙ってて！でないと、その口縫うわよ!?)
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作者名：小雪
| 作成日時：2018年12月1日 18時
