妨害者 ページ42
❀
「(どうしよう…………。
このままじゃ何も話せないまま終わっちゃう)」
行儀悪く、口に含んでいた箸を思わず噛んでしまう。目の前に座る西蔭のご飯の減り具合を見る限り、あと数分で食べ終わってしまうだろう。
するりと視線だけを味噌汁を啜る一星に移動させるとAは眉尻を下げながら再び視線を落とした。
「(一星くんがいたら計算が狂う……！
てゆうか何でわざわざこの子、隣に座るの？)」
はあ、とため息をついて味噌汁に映る
自分の情けない顔を見つめていると
誰かの箸が彼女の目の前を横切った。
「美味しいですね、このおくら」
ねばねばしてて先輩みたいです、と箸で摘んだおくらを見つめながら意味のわからない事を発言した一星にAの眉間にシワがよせられる。
「一星くん、何してるの？」
「先輩の具を食べてます」
ぴき、と額に青筋が入る。
そう言いながらも一星はAのお椀から味噌汁の具を盗んでは食べ、盗んでは食べを繰り返している。
「一星くん自分のあるよね？」
「先輩の具の方が美味しいんです」
そんなわけない、絶対うそ！と叫びたい気持ちをぐっと堪えてAは一星の箸によって攫われていく具たちから目を伏せて、気持ちを静めた。
「(お、落ち着くのよ日暮A。これも一星くんの作戦かもしれないんだから………！)」
ちらっ、と片目を開けて一星を見れば
具どころかお椀ごと持っていかれて
そのまま味噌汁を喉へと流し込んでいるのだから
Aの頭には無数の怒筋が浮かび上がる。
「(と、とにかく今は、西蔭くんを優先しなくちゃ)」
気持ちと葛藤しながらぶんぶん、と、頭を左右に振ったAは意を決して箸をトレーの上に置くと「西蔭くん」と名前を呼んだ。
一方の西蔭も、最初は無視をしていたものの
彼女の真剣な眼差しが視界に入ると箸を
進めるのをやめて、Aの顔をじっと見つめた。
「あのね、野坂くんのことなん____」
「あ、先輩！」
「………………ッ今度は何!?」
せっかくのチャンスを棒に振られて、怒りが心頭したAは丸い目を怖いくらいに吊り上がらせると隣にいる一星を鋭い目で睨みつけた。
「口元にミートソースがついてますよ」
「え、うそ!?」
一星のその言葉に、はっとして、一瞬怒りを
忘れたAは慌てて口元を拭おうとするが
それは一星の手によって阻まれた。
(待ってください、僕が拭いますから)
(あ、あの一星くん？)
(何ですか先輩)
(か、顔近い……)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 299人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小雪
| 作成日時：2018年12月1日 18時
