星を超えた想いを13【オリオンの刻印】 (ページ38)

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墓穴を掘るページ38

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時刻は19時を回り、過酷な特訓を終えた

選手たちは、お風呂に入って汗を流すと

イレブンバンドで時刻を確認して

空腹を満たすために食堂へと足を運んでいた。

「いい匂いしてきましたね！」

「そうだな」

食堂へと続く廊下を歩いていくにつれて

食堂から美味しそうな匂いが漂い

Aと風丸の鼻腔を擽る。

後ろ手を組みながら、廊下を歩いていると

不意に風丸から「なあ、日暮」と声をかけられた。

「組み分けが終わった後、お前の姿が見当たらなかったが…………いったいどこに行ってたんだ？」

ふんふん、と鼻歌を歌いながら数歩先を歩く

上機嫌なAに風丸がそう質問を投げかけると

彼女の口から予想外の返答が返ってくる。

「遊園地」

「は……………………？」
「あっ……………………」

"遊園地"その言葉に耳を疑った風丸は、思わず歩いていた足を止めてその場に立ち止まってしまう。そしてAもまた、マズいと思ったのだろう、先程まで楽しそうに歌っていた鼻歌を歌わなくなり、壊れたロボットのようにゆっくりと風丸へ振り返る。

「えー…………えっと……ゆ、遊園地……からスポンサー契約が来たんです、イナズマジャパンに！」

人差し指を立てて、頬にたらりと汗を

垂らしながらAがそう言うと、あまりにも

分かりやすすぎる誤魔化し方に怒る気に

もなれず、風丸は呆れたような溜息をついた。

「つくならもっとマシな嘘をつくんだな。

それに、世界大会にスポンサー制度はないぞ」

痛いところをつけば、ただでさえ青かった

彼女の顔色がますます青くなり、額から

大量の汗を流して口元を引き攣らせていた。

そしてAは、これ以上誤魔化しきれないと

悟ったのか諦めたように息を吐くと口を開く。

「先輩達が特訓してる間、誰と…………とは言えませんけど、思いっきり遊園地堪能してました……」

するりと風丸から横目を移動させて目を合わせようとしないAに風丸は二、三歩彼女の元へと歩み寄ると、向かい合うような形で真正面に立った。

「一星じゃないのか？」

「さ、さあ…………？」

風丸の嵌め込まれたような綺麗な赤茶色の瞳がすっ、と萎まれて鋭い目でAを射抜く。

「一星なんだな」

そう言うと、Aは何も言わなかった。

「ったく、本当に分かりやすな、お前」

後頭部に手を当てながら、風丸はもう一度

大きなため息をつくと、目を

逸らしたままのAの頬に、そっと手を伸ばした。