星を超えた想いを13【オリオンの刻印】 (ページ31)

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飴と鞭ページ31

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あれから、幾度となく繰り返された

口付けとは程遠い舌の噛み合いに

Aの体力も限界に近づいていた。

ムキになって何度も荒々しい口付けを

交わしてくる一星に必死に抵抗をするA。

舌が侵入する度に噛めば、一星はAの舌を噛み返す。色気もへったくれもない口付けの交わしあい「ん゛っ、ん、」とお互いの呻き声に近い声と、吐息が触れ合い舌の感覚が痺れて、おかしくなる。

「はぁ……は……っ」

痛みから伝ったAの生理的な涙と

鉄の味が口内でひろがり、絡まり合い

互いの唇の端から糸と血が混じったものが落ちた。

噛まれた舌から出てきたAと一星の血も、二人の唾液や水音で消毒されるかのように洗われる。

さすがの一星も、何度も噛まれたせいで

苦しくなったのか、浅い呼吸を

繰り返しながら肩を上下させてAから

唇をそっと離すと、とろんとした瞳で

見つめ合い、互いの肩に頭を乗せあった。

「き、きもち、わる……い」

「こんな、最低最悪のキスは初めてです」

血と唾液がごちゃ混ぜになった不快感と酸素不足で頭がふわふわしてAは、一星の肩を力なく叩く。

「い、一星くん嫌い……」

「僕も嫌いですよ舌噛む先輩なんか」

色気もへったくれもありません、と言いながら

息を整えた一星はまだ息を乱すAを横目に

ゴンドラがあともう少しで地上に降りるのを

確認していた。

「先輩、最後にもう一度だけやらせてください」

「もう、やめて一星くん

おねが…い、こんなの、おか…んっ」

口元に手の甲を当てて涙を目に溜めて

拒否するAの言葉など聞かずに、一星は

その手を押し退けると、的のような

大きな瞳をそっ、と閉じてAの唇に

自身の唇を優しく押し当てた。

先程のような、荒々しい乱暴なものとは違う、温かくて、優しい触れるだけの口付けにAはどうしたらいいのか分からず、戸惑いながら瞳を揺らす。

「(なん、で…こんな優しく)」

唇の温もりを感じながら目の前には

太い眉と、一星の閉じられた瞳の先にある

長い睫毛が視界いっぱいに映っている。

整った一星のその顔立ちに、不覚にも胸が高なってしまい、だんだんと心拍数が上がっていく。

「…先輩」
「…っ」

唇を名残惜しそうに離され、頬を撫でられると

Aは耳まで赤くして一星から目を逸らす。

絡まれていた指先は…………熱を持って、熱かった