星を超えた想いを13【オリオンの刻印】 (ページ4)

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一人っ子ページ4

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手当てをするだけのはずが、思いの外

話が弾んで身の上話にまで発展してしまった

in、ベンチに座る二人の少年少女の会話。

「で、どうなんですか？」と少しキツめに

貼られた絆創膏に仏頂面でもう一度問う一星。

「いないよ、一人っ子

だから兄弟とか姉妹ってちょっと憧れてた」

「そう言うものですか？」

自分から話題を振ったわりには、興味がなさそうに立てた方膝の上に頬杖をつく一星に苦笑いしながらも頷いたAはそのまま話を続ける。

「色んなことを話したり、出かけたり、趣味があったりしたら一緒に没頭できたりもするでしょ？一人だとそういうのってできないから……」

ちょっと羨ましい、と言いながらベンチから立ち上がり、大きく伸びをするAを見上げる一星。

「………趣味に没頭、か」

遠い記憶を探るように目を細めた一星の脳裏に浮かんだのは、幼き頃の弟との思い出。

両目をそっと閉じて、一星は自分の心に

果たすべき自分の使命を深々と胸に刻み付けた。

「そういう一星くんは？」
「…………え？」
「兄弟とかいるの？」

思い出に浸って話を聞いていなかった

一星は閉じていた瞼を開いて再びベンチに

腰掛けていたAを視界に入れると

「……俺は」と言いにくそうに口を開いた。

「先輩に教える義理なんてありません」

しかしそこまで言いかけると、一星はふいっ、とAから顔を背けてサッカーコートへと目を向ける。

「え、私教えたんだけど」

不服そうに眉を八の字にするA。

「答えてくれなんて言ってませんから」
「ああ、そう……」

一星の可愛げの欠片もないその態度に

怒筋を飛びかわせたAの手から

ぐしゃ、という音が聞こえた。

ふと音のした手を確認すると絆創膏の箱が

彼女の力によりぐしゃぐしゃに潰れている。

「先輩の握力なら熊でも殺せそうですね」

「一星くん私の事なんだと思ってんの」

かわいい先輩です、と満面の"貼り付けた笑顔"で心にもないことを言う一星に「それはどうも」と片眉をひくつかせて潰れた箱の中へ手を入れて絆創膏を取り出そうとするが、目当ての紙が手に触れない。

「あれ、絆創膏切れちゃった……」

片目を瞑り、箱の中を覗き込むが

どうやら一星の腕に貼ったので最後だったようだ。

「いいですよ別に、頬の傷なんて」

「ダメ！一番傷が入ると危ないところなんだから」

練習戻ります、と言ってベンチから立ち上がった一星の腕を掴んで引き止めてから座らせる。