星を超えた想いを13【オリオンの刻印】 (ページ3)

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魔性の狼ページ3

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「喉乾いてるでしょ？飲んでていいよ」と

言われて先程手渡されたドリンクボトルの

蓋を開けて、乾いていた喉を水分で潤しながら一星は救急箱から絆創膏を取り出すAを見つめる。

「腰、大丈夫ですか」

「えっ、ああ、うん………まだ痛む、かな」

時折痛む腰を押さえているのが気になり

一星がそう声をかけると、Aは一瞬

驚いたように肩をビクつかせた。

だが、すぐに一星の方を振り返って曖昧に

答えると、彼は「そう、ですか」とAから

地面へと視線を落として再びボトルに口をつける。

「腰のこと、一星くんに話したっけ？」

救急箱から取り出した絆創膏を片手にAが

口元に人差し指をあてた。

「昨日……………激しくしすぎましたから」

「え？」

ぼそ、と目を合わせずに独り言のように

呟いた一星にAは首を傾げる。

「先輩の体に負担かけたかな、って」

「ごめん一星くん、なんの話？」

全く話が読めないAをよそに

「次は優しく」や「でも、いざやると」など

一人で話を進めていく一星に頭に大量の

はてなマークを飛ぶ。

「吐き気とかはしませんよね？」

「う、うん。ただ腰が痛いだけ……」

「ああ、そもそもするわけないか」

あの、一星くん？と先程から顎に手を当てて

気難しそうな表情で俯く一星を下から

覗いてみれば、彼の綺麗な吸い込まれそうな

ブルーの瞳とAのコバルトブルーの瞳が

かち合うと、一星は彼女を間近で

見下ろしたまま「先輩」と呼んだ。

「日本には、知らぬが仏って言葉があるんです」

「う、うん？」

いきなり何を言い出すんだろう、と

思いながら顔を覗き込むのをやめて絆創膏を

剥がしていると「既成事実作るまでは」と言う

言葉が聞こえて、Aは一星を見上げる。

「一星くん、私に何かしたの？」

「それより先輩って、姉弟とかいるんですか？」

しれ、っと話をそらした一星に咳払いをしたくなったAだが、追求すれば後々面倒くさそうなので、一星の話に合わせて「兄弟？」と聞き返した。

「はい、弟とか、妹とか

……先輩って"無駄"に面倒見がいいので」

「それ褒めてるの？貶してるの？」

眉間にシワをよせて一星を一瞥して

箱から絆創膏を取り出す。

「まさか、貶してますよ

……あ、間違えました、褒めてます！」

ぺろっ、と可愛く舌を出して、悪戯っぽく

笑う一星に、Aは口元を引き攣らせながら

乱暴に絆創膏の紙を剥がしたのだった……