星を超えた想いを13【オリオンの刻印】 (ページ1)

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怪我の功名ページ1

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木漏れ日の光が射し込むサッカーコートの

ベンチでは、Aは水道場に向かって

水を汲みに行ったつくしと杏奈に代わって

先程見事に顔面スライディングを決めた

一星の手当てに追われていた。

「派手に転んじゃったね」
「………………いたっ、」

消毒液を含ませたガーゼで擦りむいて

小さな傷口を開かせた一星の頬に、ぺたりと

あてがうと一星は片目を瞑って顔を歪ませた。

「あ、ごめん……しみた？」
「いえ、大丈夫です……」

顔色を窺うように一星の顔を斜め下から

覗き込むと、一星はふいっ、と顔を逸らして

痩せ我慢をする。

「あと少しで終わるから、もう少し我慢してね」

「はい、ありがとう……ございます」

うん、と頷いて一星の擦りむいた腕をそっと

掴むと一瞬反応するかのように一星の手が揺れた。

「あ、ごめん……また傷んだ？」と眉尻を下げながら問いかければ、一星は「そんなんじゃないんで……」横目を移動させて呟いた。

「おいブス、そんなやつほっとけよ！」

「ぼーっとしてたそいつの自業自得だろうが」

コートの方角から、ヒロトと灰崎がボールを

それぞれ脇に抱えながらヤジを飛ばしてくる。

後ろの方で、円堂がタツヤのシュートを

受け止めて「良いシュートだ！」「ありがとうございます！」というやり取りも聞こえた。

「いいんですか？あの二人無視して」

「ああ……いいの、いつものことだから」

手当てを受けながら一星が顔だけを

灰崎たちに移動させて見つめると

「無視してんじゃねぇよ」や「このブス」

などの低レベルな罵声が飛んでくる。

Aはそんなこと気にもとめずに黙々と

一星の腕を消毒ガーゼでぺたぺたと触っていく。

「どうして……僕なんかに優しくするんですか」

一星が心の中で思っていた本音を吐露すると、消毒していたAの手が一瞬止まり「どうして、か……」と言うと再び手を動かした。

「僕のした事忘れてませんよね？

昨日だって、邪魔さえ入らなければ

あのまま湖畔で先輩を襲うつもりだったのに」

「一星くんってサラッと怖いこと言うよね……」

「事実なんで」と真顔で突き返してみると

Aは苦虫を噛み潰したような表情で

返答に困ったように笑うと「うーん、」と唸った。

「まあ……確かにそうなんだけどね」

血のついたガーゼをポリ袋に捨てて、消毒液を

持参した救急箱にしまうとAはそよぐ風と

眩しい太陽に目を細めながら、空を見上げた。