星を超えた想いを12【オリオンの刻印】 (ページ9)

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腹の探り合いページ9

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「それで、話ってなんですか？」

はあ、と息をついた一星が空を見たので

Aも釣られて同じように、顔を傾けた。

雲の切れ間に、飛行機雲が走り、豆粒ほどの機体と、そこから棚引く雲が、一直線に伸びている。

「さっき………どうして私に謝ったの？」

Aがぽつりと呟くと、一星は横目で

彼女を一瞥すると、また空を見上げて口を開いた。

「それ、先輩の聞き間違いですよ」

耳遠くなったんじゃないですか？この歳でかわいそうに、耳鼻科おすすめしましょうか？と真顔で言ってくる一星に「け、結構です……」と口元を引き攣らせながら怒筋マークを飛びかわせるA。

今まで築かれていたAから一星に対する

"かわいい後輩"像にヒビがはいり、ぱりんと

鏡のように割れた音を立てて無残に崩れていく。

「話ってそれだけですか？」

いつの間にか空を見上げるのを止めてAに

背中を向けていた一星がため息混じりに

問いかけると、一星は再びその足を歩き進める。

「あなたの目的はなんなの？」

「それを聞いて先輩はどうするんですか？」

彼女のその言葉に一星は足を止めて

振り返り、顔だけをAへと向けて

突き放すような言葉を投げかける。

「灰崎くんたちみたいに俺を潰しますか？それともまた先輩の"大好き"な"自己保身"ですか？」

粘りつくような嫌な視線で彼女が

傷つくような"自己保身"という言葉を

添えれば、Aの顔が少しだけ歪められる。

「自己保身とかそんなんじゃない。

私は一星くんを潰さないし、潰したくもない。」

先程のような言葉で揺さぶっても、自分の意思でここにいることをちゃんと告げて、一星に怯まないAに「へえ」と面白そうに口角を上げた。

「こんなこと言うと、また偽善者とか

思われるかもしれないけど……私は……

一星くんを止めたい。一星くんを受け止めて

ちゃんと、"あなた自身"と向き合いたい。」

嘘偽りを感じさせないその言葉に一星の丸い瞳はより丸められ、驚いたように瞳孔が開かれる。

「止める……？」

暫く小さく口を開けてぽかんとしていた

一星だったが、すぐに下を俯きながらそう

呟くと口角を上げて徐々にその肩を揺らし始めた。

「一星くん……？」

糸が切れた機械のように「あははは」と

声を上げ、お腹を抱えた一星は

「先輩、それ最高」や「バカとは思ってましたけど、まさかここまでだったなんて」と笑いながらAを侮辱する言葉を吐露しはじめる。