星を超えた想いを12【オリオンの刻印】 (ページ8)

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断片的記憶ページ8

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「さっきの話をキミは聞いていたのか」

「えっ!?」

どき、と心臓が音を立てて嫌な汗が頬を伝う。

しどろもどろになりながらするりと横目を

移動させて「いやー、その……」と

歯切れの悪い言葉を零すAに変わらず

死んだ魚のような瞳で見下ろす男。

「あ、ああ……でも！話の内容までは

聞き取れなかったので大丈夫……だと、思います」

これでは盗み聞きしてました、と自分で言っているようなものでは無いか……！Aは冷や汗をダラダラと頭の後ろでかきながら顔を引き攣らせる。

「ここ最近、物忘れが激しくはないか？」

「………………は？」

男の直球すぎる質問に、Aは違う意味で

顔を引き攣らせて真剣な眼差しで

見下ろしてくる男に引いたような目を向けた。

「記憶が断片的にしか覚えていなかったり

初めて感じたことや、行った場所に

既視感のようなものを感じたことは？」

「(何、この人……記憶って、……)」

右手首を掴まれ、問い詰められるように語りかけてくる男にAは徐々に顔を顰めさせる。

……心当たりが、無いわけじゃなかった。

灰崎とのことや、その幼馴染の茜の存在。

胸の中で渦巻くモヤの正体を知っていたはずなのに、今ではそれも思い出すことができない。

思い出そうとすればするほど、頭に

耳鳴りのような音が響くから彼女は

無意識に思い出さないようにしていた。

「(あ、熱い……っ)」

掴まれた手首が次第に熱を持ち始め、Aが不安そうな瞳で男を見上げていたその時____。

「そんな所で何してるんですか、先輩」

「い、一星くん！」

その声に、Aは男の背後から僅かに

見える青い髪の少年____一星に視線を映して

男の体から顔を覗かせて彼の名前を呼んだ。

変わらずポケットに手を入れたまま

二人の元へと歩く一星は、腕を掴まれている

Aを興味なさげに一瞥すると

後ろを振り返っている"男"に視線を移して

アイコンタクトを取り合う。

すると男は何も言わずに掴んでいたAの腕を離すと「キミとはまたどこかで会うことになるだろう」と意味深な言葉を残して、観客席から姿を消した。

「一星くん、さっきの人……」

「どうして先輩がこんな所にいるんですか？」

一星に振り返るや否や、冷たい声で言い放たれる。

「一星くんを探してたら、たまたま……」

「僕を？」とあからさまに嫌な顔をして

眉間にシワをよせる一星に

苦虫を噛み潰したような表情で頷くA。