星を超えた想いを12【オリオンの刻印】 (ページ44)

今日:13 hit、昨日:2 hit、合計:381,008 hit

第34話罪悪感なんて、ないページ44

❀

草木も眠る丑三つ時_____。

部屋の中は真っ暗だった。窓の重厚な

カーテンが引かれ、室内の明かりは消されている。

カーテンの隙間から電灯の光が漏れていたが

それもかえって暗闇を

際だたせる役目しか果たしていなかった。

そんな部屋の中で少年はベッドから

起き上がると、額の汗をタオルで拭う。

「………く…………ん……」

服を整え、ジャージのファスナーを締めた

少年の耳にベッドで眠る少女の誰かの

名前を呼ぶ声が聞こえた……。

後ろを振り返り、少年は襟元を整え終えると

寝息を立てる少女の元へ歩み寄る。

______罪悪感なんて、ない……あるわけない

眠る少女に布団を掛け直した少年は

暗闇の中で顔を顰めると、心の中でそう自分に

言い聞かせると部屋をあとにした。

部屋を出ると、待ち伏せをしていたかのように

彼女の部屋の扉の前の壁に凭れ掛かる

不動の姿が真っ先に少年の視界に飛び込んだ。

「声が廊下まで漏れてたぜ？…………一星」

「盗み聞きなんて悪趣味ですね」

両腕を組み、片足の裏を壁にくっつけながら

面白そうにくっくっくと笑う不動に

少年…………一星は不快そうに眉間に

シワを寄せながら持参していたタオルで

まだ残る額の汗を拭いていた。

「お盛んなこった」

「放っておいてください」

ふいっ、と不動から顔を逸らしてタオルを

首から掛けた一星は不動の横を通り過ぎる。

「お前、アイツのこと好きなのか？」

その言葉に、一星の歩いていた足が止まった。

「…………まさか

バカなこと言わないでください」

的のような丸い瞳をさらに丸めて純粋な

少年のような瞳を瞬かせた一星に

「演技上手なこったな」と不動は目を伏せる。

「先輩は利用するための道具にすぎませんよ。あの人バカで扱いやすいし、都合がいいんですよね」

悪戯な笑みを頬に浮かべて普段は見せないような腹黒さを見せた一星にひゅ～、と口笛を吹く不動。

「さっき、部屋から何度もAって呼ぶ

お前の声が聞こえた気がしたが…………」

"俺の聞き間違いだったのかもなぁ？"

口角を嫌なくらい吊り上がらせた

不動は立ち止まったまま動かない一星の肩に

すれ違いざまに手を置くと、わざとらしい

言葉を並べて暗闇のさなかへと消えていく。

「……………………っ」

一人、廊下に取り残された一星は赤い頬を

隠すようにして口元を手の甲で隠すと

シャワールームへと向かったのだった____。