星を超えた想いを12【オリオンの刻印】 (ページ42)

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疑わしきは罰せずページ42

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"疑わしきは罰せず"

それが、監督の放った言葉だった。
まだ一星が完全に黒と決まったわけではない。
その証拠がない限りは手出し無用。

監督の後ろ盾もあり、一星はそれを利用して
「疑わしきは罰せずだよ、"灰崎くん"」と語尾に音符をつけるように嫌味ったらしく言い放った。

そしてその日の夕食____

"たっぷり野菜の煮込みハンバーグ"

その献立メニューに目を通したAは

今夜は野菜か…と苦い表情で呟いて

トレーを手に取り、長蛇の列に並ぶ。

「おおっ！美味そうだな！」
「これで体力つけて、次の試合も頑張るんだよ！」

料理を前に涎を垂らす剛陣とスープを注ぐ

ヨネの会話をトレーを持ちながら

隣で聞いていたAは小さなため息をつく。

「一星くん…………」

あのあと、一星は繋いでいたAの手をあっさりと離すと何事も無かったかのように宿舎へと戻った。

一方のAは、未だに繋がれていた一星の

温もりを感じながら無意識に名前を呼んで呟く。

「腰もまだ痛いし……………最悪」

ジンと痛む腰を擦っていると「老化か？」と

デリカシーのない剛陣の発言に軽蔑の

目を向けると、Aは無言で彼の足を踏んで

トレーを持ち直すとその場をあとにした。

夕飯が乗ったトレーを手に、どこへ座ろうか

食堂の中を見渡しているとAは

同じく辺りを見渡していた西蔭が視界に入った。

「あ、あの……西蔭くん」
「…………」

さりげなく声をかけると、西蔭は

蔑んだような目でAを見下ろすと

何も言わずに彼女の横を通り過ぎて

無言で奥の席へと座ってしまう。

「その様子じゃ、問題は解決してないみたいだな」
「風丸さん……」

はぁ、と三度目のため息をついて空いていた

席に腰掛けると、頭上から声が降りかかった。

「はい………」

苦々しい表情でするりと横目を移動させたAと、黙々と夕飯を食べる西蔭を交互に見つめた風丸は椅子を引いて、Aの隣に腰掛ける。

「何が原因なんだ？」
「…………分かんないんです」

スープを見つめたまま呟いたAに

「理由もなしに怒るようなやつじゃないだろ」

風丸がハンバーグをナイフとフォークで

綺麗に切りながら彼女を一瞥して聞き返す。

「野坂くんの話になってから

急に目の色が変わったんです、西蔭くん」

たぶんですけど、と付け足してスプーンで

掬ったトマトスープに反射した自分の情けない

顔を見つめながらAが静かに呟いた。