星を超えた想いを12【オリオンの刻印】 (ページ21)

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失敗作ページ21

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「とにかくでてって！私、今忙しいんだから！」

ヒロトの背中を精一杯押して厨房から

追い出そうとするAだがヒロトは

一ミリたりとも動いてくれない……

むしろわざと踏みとどまっている気さえする。

「どうせ今の状態じゃ、まともなもん

作れねーだろ。材料の無駄だからやめとけ」

図星だったのか、今まで口を開いていたAが急に押しだまり、ヒロトの背中から手を離す。

ヒロトは面倒くさそうに後頭部を片手で

乱暴に掻くと、皿の上に山積みになった

"失敗作"の一つを人差し指と親指で摘むと

口元へと持っていく。

「ちょ、だからそれ焦げてるってば……！」

Aが慌てて手を伸ばしてヒロトから

奪い取ろうとするも、ヒロトは気にせず

口の中にぽいっ、とそれを放り込んだ。

「にっが、」と顔を顰めながら焼け焦げた

クッキーを飲み込んだ。

「ヒロトくんってゲテモノ好きなの？」

「んなわけねぇだろ、ブス」

まだ口の中に苦味が残るのか、口直しに

ガムを噛み始めるヒロトに

「じゃあなんで？」と首を傾げるA。

「お前が暗い顔ばっかしてるからだろうが。」

「何それ、意味わかんない」

それと焦げたクッキーを食べるのに

一体なんの理由があるというのだろうか。

Aが眉を八の字にしているとヒロトは

ガムを膨らませながら彼女の額に指を近付ける。

「お前には一生分かんねぇよバーカ」

そのまま至近距離からデコピンを食らわされ

「あだっ!?」と変な声を出してしまう。

そのまま額を抑えながら、ヒロトを

押し退けるとAは冷蔵庫へと向かい

卵とバターを取り出して慣れた手つきで

卵を器の中へと割っていく。

「お前、ずっと挙動不審だっただろ」

「だ、誰のせいだと思ってんのよ！」

ボウルを手に持ち、バターをクリーム状に

なるまでよく練り込むように、泡立て器を

片手で動かしながら気まづそうにヒロトから

視線を逸らし、背中を向けるA。

「……んで、どうだったんだよ」

「どうって、何が？」

今度は間違えないように「粉糖」と書かれた

シールを確認して、練りこんだバターの上に

少量の砂糖を加えて再び混ぜ込んで目分量を

測りながらヒロトの質問に受け答えしていると

彼はとんでもないことを口にしてきた。

「一星の舌に決まってんだろ

がしゃん、がたん、ごろごろ……。

持っていたボウルがAの手から滑り落ち

そのまま厨房の冷蔵庫まで転がり、止まった。