星を超えた想いを12【オリオンの刻印】 (ページ19)

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心ここに在らずページ19

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アジア予選第二試合日本対オーストラリア戦の

試合は見事、難敵シャイニングサタンズを

下して第三試合への切符を手に入れた

イナズマジャパンの勝利により幕を下ろした。

しかし、勝利の余韻も束の間。

何者かに仕組まれた罠により、鬼道は

在らぬ容疑をかけられて日本代表を降ろされ

イナズマジャパンは窮地に立たされていた。

そんな波乱万丈の一日が終わろうとしていた

その日の夜______。

「Aちゃん、塩と砂糖間違えてる！」
「あっ、ご、ごめんなさい！」

「あんた、それ砂糖じゃなくてコショウだよ！」

イナズマジャパン宿舎の厨房では

慌ただしい声が響き渡っていた……。

第三試合への切符を手に入れた

チームメイトのために差し入れの手作り

クッキーを作るため、厨房を借りていたA。

最初は、料理に慣れている彼女なら

一人でも大丈夫だろうと秋もヨネも

クッキーを作るAを厨房に残して

選手たちが食べ終えた食器を

マネージャーの杏奈たちと共に片付けていた。

しかし数分前「焦げ臭くないですか？」と

鼻をつまんだつくしの何気ない一言が

きっかけで秋とヨネは血相を変えて

厨房にいるAの元へ向かい、今に至っていた。

「Aちゃん焦げてる焦げてる！」

秋の悲鳴に近い慌ただしい声が聞こえ

杏奈とつくしは顔を見合わせると食堂から

厨房に繋がる窓から顔を覗かせる。

「消化器なんて持ってきてどうするんだい!?」

「す、すみません！えっと、えーっと……」
「落ち着きな！」

たかがクッキーが焦げただけだと言うのに

普段のAからは考えられないような

珍行動ばかりを連発していた。

厨房に置いてある備え付けの消化器を持って

オーブントースターにかけようとしたところを

ヨネに慌てて止められるA。

「だからAちゃんそれコショウ！」

秋のツッコミを最後に、杏奈とつくしは窓から目を逸らし、背中を向けると小さなため息をついた。

「宿舎に戻ってきてからのAちゃん

なんだか様子が変……どうしたんだろう……」

心ここに在らずと言った様子で

話しかけても、必ず数秒遅れで反応される。

それも的外れな回答ばかりで、ちゃんと

話が耳に入っていないようにも見えた。

「ご飯の箸もすすんでなかったし……」

「何かあったんでしょうか……」

うーん、と頭を抱えるつくしと杏奈の後ろで、秋の悲鳴が聞こえたのはこのすぐ後のことだった。