星を超えた想いを9【オリオンの刻印】 (ページ6)

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氷上の皇子ページ6

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勢いが衰えぬままイナズマジャパン陣内へ切り込んでいくペクの姿はまさに、レッドバイソンの名に恥じぬ突進力であった。しかしそこへ、DF吹雪士郎が立ちはだかる。

「なら、切り崩すまでだ！」

闘牛の如く物怖じせずに勢いのまま突き進むペク。しかし彼の行く手を氷のフィールドが阻む。

フィールドの一面に氷が張り吹雪はスパイクを駆使してその上を軽やかに滑りぬける。慣れない氷のフィールドに、足を取られたペクは思うように動けない。

"雪原の皇子"

彼の名は伊達ではない。

「アイスグランド！」

空中でトリプルアクセルを決めると氷上にかかと落としをくらわせる。氷の塊がペクを襲い、氷漬けにされてしまう。ボールはそのまま宙へと持ち上げられ、吹雪はそれを胸で受け止めると、前線へパスを繋げる。

「前々から思ってはいたけど、吹雪くんって雰囲気は童話にでてくる皇子様みたいよね｣

恍惚とした表情でぽつりと呟いたAの言葉に、剛陣は不機嫌そうに眉を顰める。

「なんで女子っつーもんはよ、ああいうヒョロっとしたやつにコロッといっちまうんだよ！」

ずん、と顔を近づけてくる剛陣に「さ、さあ.....」と苦笑いを零す一星。隣にいた彼はいい迷惑だろう。

両者一歩も譲らない白熱とした試合展開。試合が始まって時間が経っていないにも関わらず、観客の興奮はとどまることを知らない。

「ペク、攻めるぞ！」

「言われなくたって！」

ソクがボールをキープし続けるペクに指示を出すと、地面を勢いよく蹴って走り出す。彼らが駆け抜ける度に砂埃が舞い、突進していくその姿は「怒った闘牛」そのもの。

「特攻バッファロートレイン！」

ソクを先頭に、後ろにペク、イ・ドンヒョクが凄まじいスピードでフィールドを駆け抜けていく。

迫り来る緊迫感と必殺技の生々しい迫力に闘牛場に立たされているかのようなプレッシャーがかかる。赤い旗を目掛けて突進するかのように、次々と選手たちを抜いていくレッドバイソン。

「今の氷浦くんのプレー.....。」

その時、Aはある"違和感"に気がついた

「どうかしたんですか？」

坂野上が首を傾げる。

「抜かれたと言うよりは、抜けたような感じがする.....。どうしてだろう」

そう、抜かれたと言うよりは"抜けた"のだ。吹き飛ばされる寸前に、氷浦自身が避けたようにも見える。Aがフィールドにいる氷浦に視線を向ければ、どうやら彼も"違和感"を感じているらしい。