星を超えた想いを9【オリオンの刻印】 (ページ42)

今日:60 hit、昨日:2 hit、合計:347,672 hit

オーストラリアページ42

.

ミーティングルームの自動扉が開き

中へ入ろうとしたAと吹雪を

待っていたのは「遅せぇ」と腕を組みながら不機嫌そうな声で席に座る灰崎の声だった。

「全員集まったようですね。

お二人も早く席に着いてくださ～い！」

ぱんぱん、と手を叩いて自動扉の前で

突っ立っていた吹雪とAにそう促すと、二人は階段を降りて、空いている席へと着席する。

「これから、次に対戦する"オーストラリア"代表の試合映像を見てもらいます。」

モニター画面の前に立った趙金雲が

次なる対戦相手を発表すると

選手たちはザワザワとざわつき始める。

「次の対戦相手はオーストラリアか～」

ふわぁ、と欠伸をしながら眠そうにAが呟いた。

「スポーツが盛んな国だね」

と、彼女の右隣に座っていた吹雪が、体を前に起こして答える。

「いったいどんなチームなんだろう」

ぴっ、と言うリモコンの音が聞こえて

吹雪の方を見ていたAの視線は

自然とモニター画面へとうつされる。

しかし、そのモニター画面に映し出されたのは巨大な緑の葉っぱだった。

「葉っぱ.....？」

Aがこてん、と小首を傾げていると

その葉っぱの間から、いつかのナターシャが

顔を覗かせて

【社長さん、ここハワイじゃナイネ】

と、海パン姿で呑気にジュースを啜る趙金雲に振り返り、話しかけたところで映像が切れた。

「おっとこれは、ナターシャとハワイアンセンターに行った映像でした！」

失敬失敬、と後頭部に手をあてながら笑う

監督に「間違えてんじゃねえ！」と

剛陣が拳を震わせて怒鳴る。

「実はですね、オーストラリア代表の映像は手に入れられなかったんですよ。」

「それじゃあミーティングは.....!?」

鬼道の隣に腰掛けていた風丸が

険しい表情で監督に問いかければ

「無理ですねえ」と呑気な回答が返ってくる。

「最低.....」

一体なんのために呼んだんだ、と据わった目で監督を見つめるA。

「本日は解散で～す」

戸惑う選手達をよそに、軽快なステップでミーティングルームを後にした監督。

「本当、何考えてんのよあの監督.....」

気が抜けたように背もたれに凭れ掛かるA。

「雷門でもずっとあの調子だったの？」と

聞いてきた吹雪にたいして

「いや.....まだ

まともな作戦立ててた方だと思う.....」

するりと、目を横に移動させてから....

「たぶん」と付け加えたAは、苦虫を噛み潰したような表情をしていた.....。