星を超えた想いを9【オリオンの刻印】 (ページ36)

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隠し味ページ36

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「ん～～～～～！おいしっ！」

両頬に手を添えて、口の中に入れたクッキーを

堪能するつくし。ひとたび噛めば、頬が

蕩けそうなほどの甘い味が口内の中に広がった。

「本当だ、すごくおいしいね」

サクッ、と一口食べただけでもわかる。

絶妙な焼き加減に、タツヤも思わず頬を緩ませて隣に立つAをソファーに座りながら見上げた。

「あ、俺のはチョコ味だ！」

明日人がぱきっ、とクッキーを割ると

中からとろとろの茶色いチョコレートがでてくる。

「俺はイチゴの味がする」

既に口の中に入れていた氷浦もまた、口の中でイチゴの味を堪能しながら明日人の質問に答えた。

「こっちは抹茶だ」

と、半分クッキーを齧(かじ)った万作が呟く。

そんな明日人たちの会話を聞きながら

どれ、と一つ自分も手に取り口に放り込む鬼道。

「(一見普通のクッキーと見せかけて

口の中に入れるまではその味が分からない

という仕組みか。食べていて飽きないように

工夫され.......いや)」

鬼道はそこまで言うと暫く考えるように

顎に手をあて「違うか」と呟いた。

「(食べる度に美味さと楽しみを

何度でも追求できる。それに加えて

一度に二度おいしい苺とチョコチップスを

混ぜてくるとは....やるな、日暮！)」

黙々と食べる鬼道と不意に目が合ったA。

「(口に合わなかったのかな....)」

Aが一人、そう不安に思っていると

何故か無言で鬼道から相槌をうたれた。

「えっと.....美味しい.....って意味でいいの？」

Aが不思議そうに小首を傾げていると

彼女の背後でまたも

ヒロトと灰崎の揉め合う声が聞こえてくる。

「だいたい、そのストレートから気に食わねえんだよ！」

「うっせえ、ちゅるちゅる頭！」

ガンを飛ばして、睨み合う灰崎とヒロトに

「ちゅるちゅるってなに.....」

と、Aの冷静なツッコミが入る。

睨み合っていた二人はどちらからともなく

顔を逸らすと、机に置いていたAの

作ったクッキーを摘んで口の中へ乱暴に

放り込むとエレベーターの中へと姿を消した。

「ちゃんとクッキーは食べてくれるんだ.....」

食べないと思っていたから、意外だと

Aは目を瞬かせる。

あれだけ衝突ばかりを繰り返している

二人だが、何の因果かくじ引きで同じ

部屋になったというのだから、世の中とは

分からないものだと、Aはクッキーを口の中に放り込んで他人事のように思っていたのだった.....。