星を超えた想いを9【オリオンの刻印】 (ページ3)

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アジア予選ページ3

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__FFIアジア予選第一試合当日__

日本代表の晴れ舞台ともなる第一試合の会場は親しみのあるFFでも使われていたスタジアムである。各地が更衣室の中で着替えを済ませ会場の中へと一足先に向かう中、Aは更衣室で一人、ユニフォームに身を包んである人物と連絡を取り合っていた。

野坂いよいよ韓国戦だね

野坂調子はどう?

スマホの液晶画面に浮かぶ文字に目を通すと、Aは小さく頬を緩ませて文字を打つ。

Aいい感じかな、みんな頑張ってるよ

ピースマークのスタンプを送ると「そう」と素っ気ない返事が返ってくる。これがいつもの二人の会話だ。以前、西蔭を通して渡された野坂のネックレスがきっかけで、彼女はまた、こうして野坂と連絡を取り合えるようになっていた。

野坂試合、頑張ってね

野坂応援してる

A野坂くんも手術、必ず成功させてね?

A約束だよ

そう打つと、最後に野坂からかわいいクマのスタンプが送りつけられる。思わず口からクスッと笑みがこぼれた。

*****

FFIアジア予選が日本で行われるということもあり、会場にはたくさんのサッカーファンや、今まで戦ってきたライバルチームたちが試合観戦に足を運んでいた。

期待と興奮が入り交じる歓声が会場全体を包み込む中、両チームがポジションにつく。

「みんな、相手は世界だ！世界を相手にサッカーやろうぜ！」

キャプテンである円堂が、ゴール前から仲間たちに大声で呼びかければ選手たちはそれに応えるように空に拳を突き上げて「おおっ！」と声を張り上げた。

__「残念だけどこの試合、日本は負ける」__

そんな声が、耳に流れ込んできた。ハッとして一星に視線を向けるA。

「一星くん、今」

「なんか言ったか？」

一星を挟んで隣にいた剛陣もまた、何かをボソッと呟いた彼に気がついたのか反応を示した。

「いいえ。日本がどこまで行けるか楽しみですね！」

両膝に手を置いて、にっこりと二人に笑いかけた一星に「だな」と疑うことなく頷く剛陣。

「(聞き間違いよね....一星くんがあんなこと言うはずないし)」

Aもまた、そう自分に言い聞かせて再び明日人たちに声援をおくる。その隣で、一星が自分を見つめていたことなど、彼女は知る由もなかった....。