水を差す ページ16
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鬼道の言葉で、冷静さを取り戻した
Aは、ペクから黙って手を離すと
気まづそうな表情で目をそらした。
「バカはどっちの方だか。」
やれやれ、と言ったふうに肩を竦めるペク。
煽るような発言に、彼女の心は再び乱れる。
どん、っと肩を乱暴に押され、そのままふらつき、後ろにいた杏奈に抱き止められるA。
「ラフプレーをするあんたに言われたくない！」
水を差すような言葉で挑発をしてきた
ペクに、Aは再び掴みかかろうとするが
明日人により羽交い締めにさせられてしまう。
そんな彼女の姿を嘲笑うかのように
フィールドへと戻っていくペクの姿を
灰崎が射抜くような鋭い眼光でずっと睨み続けていたことを、Aは知る由もなかった.....
一連の騒動に、会場は騒然としていたものの
鬼道の働きのおかげで、ペクとAが
退場させられることは免れた。
「A.......。」
救急箱を置いた杏奈がベンチの端っこで
縮こまるように三角座りをして膝に顔を埋めたまま動かないAを心配そうに見つめていた。
「大丈夫ですよ、豪炎寺さんはきっと。」
一星が隣に腰掛け、そっと優しい言葉をかけ
腕を掴む手に自分の手を重ね合わせると
「.....」
掴んでいた腕に少しだけ力が入り
何も言わずにただ頭を頷かせるA。
不思議と彼(一星)の温もりは彼女に安心を与えた。
そんな彼女の様子をフィールドから見ていた
イ・ドンヒョクとパクはケラケラと
そんな彼女の様子を見て笑っていた。
そんな韓国選手に灰崎は、爪が食い込むほど拳を強く握りしめ、鋭い眼光で睨みつける。
「灰崎.....？」
灰崎の様子がおかしいことに
明日人が小首を傾げる。
試合再開のホイッスルが再び鳴り響き
会場全体は歓声で再び沸きあがる。
豪炎寺が欠けた十人のまま試合に挑む日本。
ペクからのボールが受け取ったソクが
ドリブルで上がっていく。
そんな彼の元に走り込む灰崎。
「(やり返してやる.....！)」
彼の脳裏に映るのは
悲しそうに顔を覆い、涙を流す少女の顔。
スライディングを仕掛けるも、またもや
ソクにかわされてしまい、ボールを奪いそこねた灰崎は悔しそうに拳をフィールドに叩きつけた。
「A.....」
ふと、ベンチの端にいるAに視線を向けるが、彼女は変わらず膝に顔をうめたままだ。
「....クソッ！」
何故か無性に腹が立つ。
どうしようもない感情が、灰崎を悩ませた.....
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作者名：小雪
| 作成日時：2018年10月12日 15時
