星を超えた想いを9【オリオンの刻印】 (ページ15)

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当事者ページ15

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__突然の豪炎寺の負傷、計画された事故__

怒りの心は、彼女の口を押し開けて

笛のような息とともに外に溢れ出る.....。

「A、落ち着い___」

「明日人は黙ってて！！」

駆けつけた明日人がペクとAの間に

割って入ろうとするも、今の彼女は

周りが見えておらず、当たり散らしてしまう。

「ここで白黒ハッキリつけないと、また選手が傷つくことになる！そんなのもう嫌、見たくない.....」

彼女は、選手が傷つくことを何よりも恐れている。

FF決勝でのグリッドオメガに倒れ伏した

雷門を見た時もそうだった。

秘策を特訓していたことなども忘れて、取り乱していたのは記憶に新しい。

「(何も出来ずにただ見てるだけなんて.....

そんな思い、もうしたくないのにッ)」

唇を強く噛むと、口の中に鉄の味が広がる。

掴んでいた胸ぐらにも力が入り、ペクは

顔を歪めて、こう言い放った。

「とんだ言いがかりだな。」

「おい、ペク」

騒ぎに駆けつけた相手方のキャプテン

ソクがペクの肩に手を置いて

「それ以上は」と宥めるも

彼(ペク)は乱暴に肩でソクの手を振り払う。

「俺たちはただ"衝突"しただけだ。

不慮の事故。理由はそれだけで十分だろ。

分かったらいい加減この手を離せ。」

Aの腕を掴み、その手に力を入れるペク。

容赦のない腕力に顔を歪めるAだが

その手は離そうとはしなかった。

「この.....ッ！」

"不慮の事故"計画されたものにも関わらず

豪炎寺の怪我を、簡単に片付けられたような

気がして、Aは掴まれた腕とは

反対側の手をペクに向かって振りかざす。

___その時___

「待て日暮！」

「き、鬼道さん.....」

手を振りかざす寸前、鬼道にストップをかけられ、Aの手は宙を掴んだ。

「ここで相手選手に手をあげれば

お前が退場をくらうことになるぞ。」

鬼道のその言葉で、今までペクしか

見えなかった彼女の視野が広がった。

気がつけば自分たちの傍には二人の審判が険しい表情で判定カードを持っていた。

「頭を冷やせ、日暮....お前の気持ちはわかる。

だが、今ここで争うべきではない。

それはお前が一番よく分かっているはずだ。」

頭に冷水をかけられたような気分だった。

審判、鬼道、当事者、そして心配してくれた

杏奈や明日人たちにゆっくりと目を移した

Aは、悲しそうに眉尻をさげ、眉間に

シワをつくると、気力を失ったように

胸ぐらを掴んでいた手を離した。