友達 ページ9
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八神に肩を貸してベンチに座らせたAは彼女の痛めた足を治療するため、持参していた救急箱から湿布を取り出していた。
片足のスパイクと靴下を脱ぎ捨てると、八神は痛む足を摩っていた。
それと同時に冷たい湿布が痛む足にあてがわれ「うっ」と少しだけ痛んだのか呻き声をあげた八神。
「それにしても、あそこまで個人技に持って行けるなんてヒロトさん やっぱり只者じゃないわね。」
治療を終えた八神がふぅ、と一息つきながらそう言うとタツヤが彼女のその言葉を拾い、こう言った。
「ヒロトは父親が留守の間 ずっと豪邸で一人ぼっちだった」と。
「アイツにとってサッカーボールだけが友達だったんだ。」
「友達...？」
タツヤのその言葉に湿布を救急箱へと閉まっていたAが顔を上げ、小首を傾げた。
「父さんは忙しい人だからな。」
「なんだそれ...。」
脳震盪で暫く横たわっていた南雲が片手をつきながら身体を起こす。
「南雲くん！」
「いてて...。」
まだ額が痛むのか、顔を歪めながら立ち上がろうとする南雲を慌てて支えたAはタツヤと八神の間に彼を座らせた。
「でもよ、ボールが友達だからって 何であんな個人技が身につくんだ？」
「一人でサッカーをしていても、できることは限られるはずだけど...。」
タツヤの前にしゃがみこんだAが呟くと、同意だと言うように南雲はうんうんと何度も頷いた。
「あいつは、部屋の中でサッカーをしていたんだ。俺達がお日さま園でボールを追いかけていた頃にな。」
フィールドを駆け回り、雷門選手を翻弄していくヒロトを見つめながらタツヤが話した。
「お日さま園って確か...」
顎に手を当て、呟くA。
「俺達が育った施設の名前さ。身寄りのない子供たちの集まり...とでも言おうか。」
その言葉にガラス玉のような目を大きく見開くと、「ごめん...」と気まづそうに謝った。
「日暮さんが謝ることじゃないよ。現に俺たちは、父さんに育てられたことを感謝してるんだから。」
懐かしむように目を細め、晴れ渡る空を見上げたタツヤ。
あの頃彼らは 夢中でボールを追いかけているだけだった。ボールを蹴り続ける、それだけで心が弾むような楽しさで満たされていた。
「ヒロトに初めて会ったのは、俺が父さんの家に迷い込んだ時。」
−−−そんなある日の出来事。
ボールが森の方へと飛んでいってしまい それを取りに向かったタツヤは森の先で星二郎の豪邸へと辿り着いてしまう。
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作者名：小雪
| 作成日時：2018年8月10日 20時
