自分だけの道 ページ49
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少女の嗚咽が、静かな入場口に響き渡る
両手の中に顔を埋めて泣く少女を
宥めるように少年は優しく囁く。
「失敗したっていい、間違ったっていい。笑われたって、恥ずかしがることない！人とは違ったって、お前が思う自分だけの道を進めばいいんだ。」
右手のグローブを外した円堂は、優しくAの目に溜まっていた涙を拭った。
「自分だけの...道」
「それでも周りが何か言ってくるなら、そん時は俺がそいつにガツンと言ってやるからさ！」
その姿がなんだかおかしくて、口元に手を当て、「なんですか、それ」とクスッと笑みをこぼす。
「やっと笑ったな！」
にしし、と嬉しそうな表情で笑う円堂に
Aは目を丸くしてキョトンとした表情で
不思議そうに首を傾げた。
「やっぱりAには、笑顔が一番だ！」
不意打ちの発言に、ぽっと頬を染めるA。
困った表情でAが笑っていると
頭にぽん、と手をのせられる。
「それにお前は十分、強化委員としてもマネージャーとしても立派に頑張ってると思うぞ。」
その言葉に目を見開いたAは
乱れた髪に気を配る余裕などなく
「 じゃあな！」と告げて、フィールドへと向かっていく小さな背中に向かって
「ありがとうございました...!!」と
礼儀正しく頭を下げてお辞儀をしていた。
後半がまもなく開始される。
そんな実況アナウンスの声を聞きながら、Aは入場口前で大きく伸びをして、深呼吸を繰り返した。
力を抜き、前へと垂れた髪を耳にかけると
Aは手首につけていたゴムを
口に咥えると慣れた手つきで髪の毛を
高い位置で結んだ。
「(私は、自分の道を突き進む...！)」
強い決意と共に
きゅっと締まったゴムの音が鳴り響く。
「よしっ！」
両頬をぱんっ、と叩いて気合を入れるA。
その顔つきはどこかふっきれたようで
凛とした佇まいに大人っぽさも感じた。
Aは足早に歩いた。
しかし誰かの注意をひくほど速くは歩かない。
再び雷門ベンチへと戻れば、相変わらずチームの空気は悪いままだった。Aが戻ってきても、選手たの誰一人彼女を気にもとめなかった。
「(このチームなら、きっと勝てる。自分を信じて...仲間を信じて。)」
自分に言い聞かせるように胸に手を当てた。
そしてAは小さく息を吸い込むと
大きく声を張り上げた。
「みんな聞いて、後半の作戦を伝えます!!」
−−そして、ハーフタイム終了の
ホイッスルが鳴り響いた...
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作者名：小雪
| 作成日時：2018年8月10日 20時
