助っ人 ページ5
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剛陣のシュートが決まったことで、永世学園は二点差にまで突き放されてしまう。十人で雷門イレブンと戦っている中、ベンチで治療を受けていたタツヤは急かすような発言をした。
その様子を見守っていた瞳子は彼を試合に戻すことを良しとはしなかった。
「お願いします、このままじゃ終われません！」
真剣な瞳で見つめてくるタツヤに「ダメよ」と瞳子が厳しく言ったその時だった。
「無理無理、俺だろ出んの。」
突如、聞き覚えのある声が頭上から聞こえたタツヤは俯いていた顔をあげる。
「ヒロト！...どうして」
そこには、いるはずのない血を分けた瞳子の弟の姿があった。彼は永世学園のユニフォームを身にまとい、スパイクを履き直していた。
「雷門のお節介な強化委員がどうしても出てほしいって言うもんでな。来てやったんだよ。」
ヒロトが親指で後ろをさすと、彼の背後からひょっこりとAが顔を出した。
「日暮さん、あなた...！」
瞳子が驚きのあまり目を見張っているとAが困ったように笑いながらこう言った。
「余計なことだとは思ったんですけど、どうしても放っておけなくて。」
頬をぽりぽりと指先で掻くAに瞳子は目を瞑ると「そんなことない」と首を横に振り彼女に礼を言う。
「お前と交代なんて...。」
治療を受けながら、タツヤは悔しそうに唇を噛み締めた。そんな彼の前に立ちながらヒロトが「んなこと誰が言ったよ。」と言い放った。
「お前は下がるんじゃねぇ、少しだけ時間を与えてやる。その間に足を癒して戻ってこい。」
「最後まで走り続けろ。」ヒロトなりの気遣いと優しさを初めて受けたタツヤは「どうして...。」と動揺した表情で呟いた。
「俺はお前の夢の助っ人だからだよ...！」
その言葉に、目を見開くタツヤ。
「とかなんとか言って、本当は基山くんとサッカーがしたいだけだからね こいつ！」
「えっ？」
ヒロトの両肩に手を置き、彼(ヒロト)の後ろからひょっこり顔を出したAがそう言えば、タツヤは呆気に取られたような表情でヒロトを見つめた。
「ばっ...！そ、そんなんじゃねぇよ！」
図星だったのか、彼は顔を真っ赤に染めたままAの手を乱暴に振り払う。
「つーかいつまでいんだよ!? さっさと雷門に帰れよこのブス！」
犬を手であしらうかのようにAを邪魔者扱いしたヒロトに姉の瞳子が「ヒロト！」と声を上げるも、悪びれがなさそうな表情で彼はそっぽを向いた。
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作者名：小雪
| 作成日時：2018年8月10日 20時
