時を超えた想いを6【アレスの天秤】 (ページ40)

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チームにも不穏な空気が流れたままとなった次の日、最悪のコンディションのまま道成を加えて練習を行っていた雷門サッカー部。

相変わらずチーム連携の練習ではなく、個々の能力に特化した練習ばかりをしていた。

「(このままじゃダメなのに...監督がいない今、私が皆をまとめないといけないのに)」

－－「正直、迷惑なんだ」－－

昨日の道成の言葉が、リフレインする。

図星だった。

自分の立場や仕事のことばかりを言って

都合のいい事ばかりをして、監視役を

盾にして選手の気持ちをちゃんと知ろうと

していなかった。

「(何でこんな簡単なこと、気づけなかったんだろう...)」

はぁ、とAが再び深いため息をつく。そんな彼女の様子を心配していたつくしが声をかけた。

「ねぇ、Aちゃん！気分転換に買い出し、一緒に行かない？」

にっこりと笑って腕を引くつくし。

その後には杏奈の姿もあった。

Aは選手たちのことが気になりながらも

つくしと共にスポーツショップへと足を運んだ。

スポーツショップにつくと早々、つくしは

当面の目的を忘れてはしゃいでいた。

「わぁ、たくさんあるね！」

「つくしさん、コーチから頼まれた物をはやく買わないと...」

目を輝かせて商品を眺めていたつくしの肩に

手を置いたAが忠告すると、つくしは

「そうだった！」と手を叩き目的の品を見つけて、レジへと駆け出した。

「神門さん、どうかしたの？」

つくしがレジの会計を済ませていると

Aの隣にいた杏奈が後ろの方をチラチラと

気にしながらソワソワとしていた。

声をかけると「その...先に行ってて」と

言い、スポーツショップから出ていった杏奈。

「あ、ちょっと...！」

Aが止めるのも聞かずに杏奈は駆け出した。

外を出て追いかけようとするが、彼女が

どっちに向かったのか分からなかった。

「(神門さんのあの様子、少し変だった)」

知り合いでもいたのだろうか。

それにしてはどこかよそよそしい。

追いかけることもできずに、Aがスポーツショップの前で佇んでいると、頭上から「日暮さん」と名前を呼ばれる。

「久しぶり、眼鏡...かけたんだね？」

顔を上げて、その少年を目にした途端

Aはガラス玉のような瞳を大きく見開かせた

「野坂...くん？」

消え入りそうな声で、彼の名を呟けば

片手をあげて挨拶をしてくれる。

後ろ手に隠されていた野坂の花束に

力が篭った気がした。