色恋 ページ37
.
次の日。
監督がいないまま、サッカー部はグラウンドに集まり、自分達なりの練習に取り組んでいた。
練習に精を出す選手たちをベンチから見守りながら、眠たそうに欠伸をするA。
「(始末書の提出に間に合ったのはよかったけど...さすがに疲れた...)」
監督の後始末に追われていたAが全て終わった頃には、窓からは眩しい朝日が射していた。
結局寝るわけにもいかず起きていたが、
それが逆にアダとなった。
迫りくる眠気に葛藤しながら、気分を紛らわすために水分補給をしていると、つくしがとんでもないことを言い出した。
「そういえばAちゃんって、氷浦くんと付き合ってるの？」
驚きのあまり飲み物が器官に入り、咳き込んでしまうA。
「い、いきなり何言うんですか！」
杏奈に背中をさすってもらいながら、Aが顔を真っ赤にさせた。
「登下校も繰り返してるみたいだし、実は二人は付き合ってるんじゃないか、って噂になってるよ？」
Aは首を左右に振り、差恥から頬を真っ赤に染めて、その噂を真っ向から否定した。
「そ、そういうつくしさんはどうなんですか？」
言い逃れをするために
今度はAがつくしに質問を投げかけた。
当の本人はきょとんとした表情で自身を指さす。
「私は特にそう言った子はいないかな〜」
「野坂くんじゃないんですか？」
Aが何気なく口にした野坂という名前に、反応してしまう杏奈。そのつもりがなくても、聞き耳を立ててしまう。
「確かに野坂くんはかっこいいけど、好きとはまた違う気がする」
あくまで一ファンとして好きなだけらしい。
ほっ、と何故か安堵してしまう自分がいる。
「杏奈ちゃんはいないの？好きな男の子！」
急に話を振られ、肩をびくつかせる杏奈。
ふと、彼女の脳裏に浮かんだのは野坂の姿。
−「キミ、名前は？」−
初めて名前を聞かれた時、少しだけ驚いた。
−「どんなことをしてでも結果を出すのが、僕のサッカーだ！」−
彼の苦悩を知った時、胸が苦しかった。
−「僕は脳腫瘍と宣告された」−
彼の秘密を知ってしまった日、酷く動揺している自分がいた。
−「君が僕に特別な感情を抱いているように、僕も日暮さんに興味を惹かれている」−
そして杏奈を最も悩ませた言葉。
あの時の彼の表情は、今でも覚えている。
「(野坂くんはきっと、Aのことが...)」
杏奈の暗い表情に、Aとつくしは不思議そうに顔を見合わせて小首を傾げていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 234人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小雪
| 作成日時：2018年8月10日 20時
