日本一 ページ11
.
そんなことはない、とAが言った。その言葉に、タツヤ以外の者ですら驚いた表情のままベンチの前にしゃがみこむAを見つめていた。
「基山くんがヒロトくんを気にかけていたように、ヒロトくんも基山くんのこと、気にかけてたよ。」
「アイツが...俺を？」
綺麗なエメラルドグリーンの瞳をゆらゆらと揺らしながら動揺した目でフィールドに立つヒロトを見つめたタツヤ。
「それに、もしも気にかけていなかったら、わざわざ基山くんに"夢の助っ人だ"なんて言わないはずだもん。」
あの時そう告げたヒロトの瞳に嘘偽りはないのを、タツヤが一番分かっているはずだ。タツヤはフィールドから目を逸らすと、顔を俯かせた。
「あ、ごめん...！部外者の私が偉そうなこと...」
はっ、と我に返り、上から目線な発言をしたと慌てて反省する素振りを見せたAにタツヤは首を横に振り「そうじゃないんだ。」と言い、顔を上げた。
「ありがとう、日暮さん。」
屈託のない目を細くして、満足そうに、優しそうに微笑みかけてくれたタツヤに少し驚いたように目を瞬かせたAだったが、すぐに表情を崩すと口角を上げてやさしく微笑み返した。
その頃フィールドでは、吉良ヒロトが放った強烈なシュートをのりかがなんとか身を呈して阻止したことで追加点は免れていた。
「瞳子監督、俺を試合に戻してください。」
スパイクを履き直し、立ち上がったタツヤがフィールドを見つめながら瞳子に告げた。
「俺はやっと アイツと一緒に走れるんです！」
「お願いします」と頭を下げたタツヤに瞳子はベンチに座る南雲、玲名を見つめた。彼らもタツヤの意思を尊重してほしいと目が告げていた。
瞳子ははぁ、と小さくため息をつくと「いいわ。」言い放ち試合に出ることを許可した。
前半ラスト五分で、基山タツヤがフィールドへと駆け足で戻っていく。
「やっと俺と日本一を目指す気になったか？」
ヒロトの隣に並んだタツヤがふっ、と笑を零しながら言うとヒロトは...
「興味ねぇよ。」
鼻で笑った態度とは裏腹に、彼も満更ではないような表情(かお)で雷門と対峙する。
そんな彼らの様子を見ていたAが小さく呟いた。
「いいな... ああいうの。」
純粋に羨ましいと思った。あんな良い関係を築けるのはきっと人生の中で一度きりだから。
「(私もいつか...)」
互いを理解し合える最高のパートナーができるのだろうか.....。
そして、ホイッスルが鳴り響いた____。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 234人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小雪
| 作成日時：2018年8月10日 20時
