第19話:強い意志 ページ1
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タツヤが負傷したことで、チームのムードは悪くなる一方であった。緑川が心配し、立ち上がれないタツヤを引っ張りあげると 彼はもたれ掛かる形で緑川に支えられる。
「基山くん...」
捻挫、または神経を痛めたかもしれないタツヤにAは気が気でないまま彼を見守った。すると タツヤはベンチに下がらないと自らが審判にそのことを告げに向かってゆく。
「無茶よ！このままプレーなんてしたら、足が壊れるかもしれないのに！」
立ち上がるのがやっとだというのに、試合を続行し フィールドに立つタツヤをAは首を横に振り、声を上げた。
「今の彼には強い意志が感じられます。日暮ちゃん、それはあなたも気づいているはずですよ。」
「でも...。」
両腕を組み、ベンチに座りながら監督は深刻な表情でAに諭した。もちろん、そんなことは彼女自身分かっている。だからこそ 見ていることしか出来ない歯痒さに苛立ちを覚えているのだ。
試合が再開されてもなお、雷門ボールに食らいついていくタツヤに明日人たちも困惑した表情を見せる。
「タツヤ、もう下がったら？あなたはよくやったわ！」
タツヤを心配して、玲名がベンチに下がるように声をかけるも彼は首を振り「イヤだ！」と声を張り上げた。
「たとえどんなにボロボロになろうと、俺は諦めるわけには行かないんだ！こんなところで...」
言い放ったその言葉とともに目には彼なりの覚悟と決意が強い眼差しとして現れていた。その様子を見守っていたAは ふと、ベンチから見える観客席に目を移した。
「あれって...」
うっすらとだがそこには見慣れた少年が立っていた。奇抜な髪ということもあり彼は一際目立っている。Aが思わず立ち上がると 隣で座っていた杏奈が不思議そうに小首を傾げた。
「.....待って!!」
暗闇の中へと姿を消そうとするヒロトを追いかけてAはつくしたちの制止を振り切り スタジアムから姿を消していく。
−−その頃
少年は、永世学園対雷門中の試合が行われているスタジアムへ到着した。
「...なんで、ここに来ちまったんだよ俺は。」
自分でも何故ここにたどり着いたのか分からなかった。気がつけば会場へと足が進んでいたのだ。自問自答を繰り返しながら、少年はサッカー関係者のみが入ることができる裏口から中へと入っていった。
「稲森明日人...」
廊下の中でも流れていたサッカー中継の様子を見つめながら少年は、冷めていた自分の心に火がつくのがわかった。
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作者名：小雪
| 作成日時：2018年8月10日 20時
