時を超えた想いを6【アレスの天秤】 (ページ22)

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どっちつかずページ22

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雷門選手たちが再び吉良ヒロトを取り囲むも、簡単にマークを外され、強烈なパスを味方選手へと繋いでいく。吉良ヒロトが連携を覚えたことで、今までの作戦は通用しなくなった雷門イレブン。

シュート体勢に入るヒロトを前に、岩戸が必殺技を繰り出す構えをした途端、してやったりと言った表情でヒロトが口角を上げた。

「かかったな...！」

ヒロトの強烈なパスを繰り出したその先には、今まで選手たちがノーマークだった基山タツヤの姿。

「いつのまにあんな前線へ!?」

驚きのあまり、思わずベンチから立ち上がるA。

「吉良ヒロトに構うあまり、肝心の彼(基山)のことを見落としていたようですね。」

迂闊だった。決して明日人たちが楽観視していたわけではない。恐らく、そうなるように仕向けられたのだろう。

「これはまずいですよ～。」

ほっ、ほっ！と格闘ゲームをやりながら監督が言うものだから、それはどっちの意味なのだとAは呆れた表情で監督を見ていた。

「決めろよ、タツヤ！！」

ヒロトの気迫のこもった応援が聞こえた。

タツヤの十八番とも言える必殺シュート「流星ブレード」が炸裂。不意打ちをくらい、必殺技を出し遅れたのりかは、そのまま追加点許してしまう。

ヒロトとタツヤ、二人のコンビネーションプレーに会場の観客席は歓声で盛り上がる。

再び追いつかれてしまった雷門に焦りの色が見え始める。それはベンチにいたマネージャーたちも同じであった。

「また追いつかれちゃいましたね...。」

どっちつかずの試合に、緊張のあまりつくしの頬に冷や汗が伝った。

「やっぱりすごい...。」

杏奈も思わず口からそんな言葉を漏らした。

「吉良ヒロトがゴッドストライカーなら、基山タツヤはゴッドリーダーってところですかねぇ？」

「CLEAR」と表示されたゲーム画面を見つめながら、監督が自信たっぷりに言った。

「なんでもかんでも、ゴッドってつければいいってもんじゃないですよ、監督。」

そんなAの鋭いツッコミに「ほほほ」と笑いで誤魔化した監督に、杏奈とつくしも苦笑いを零すしかなかった。

『いいわ、二人とも存分に暴れてきなさい！そして、勝利を掴むのよ!!』

不意に、永世ベンチから気迫のこもった瞳子の声が聞こえてきた。

「いつもは冷静な瞳子監督が.....。」

あんな表情、一度も見たことがなかった。

普段はクールな瞳子ですらも熱くさせてしまう試合に、Aも負けていられないと選手たちにエールをおくった。