第12話:軸 ページ8
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試合開始早々、灰崎のロングシュートが雷門ゴールを貫いた。先制点を入れた星章学園に雷門は唖然とその場に立ち尽くしていた。
【衝撃の幕開けです！雷門にとってこの試合はまさに背水の陣。勝たなければFF決勝大会への道が絶たれてしまう中、速攻の先制点を許しました！】
一瞬の出来事で、反応すらできなかった雷門の戦意は喪失しかけてしまう。試合が再び開始される直前、Aはフィールドの白線外へ立ち、手を挙げ「タイム」と叫ぶ。
「水神矢くん！」
「どうした日暮？」
審判からの了承を得ると、Aはポジションについていた水神矢を手招きで呼び寄せる。そして複数人の選手たちも彼女の元へと集まった。
「...今回の試合、灰崎くんを軸にチームのバランスを保ってほしい。」
Aの突拍子もない発言に、その場にいた選手たちは信じられないという顔で彼女を見た。
「どういうことだ？」
「またパス要求を無視するかもしれないんだぞ？」
灰崎と一番連携しなければならないであろう折緒、佐曽塚が意義を唱える。
「いつもの星章じゃこの試合、勝つのは困難よ。」
「俺達が雷門に負けるとでも言いたいのか？」
Aへと突っかかる天野。
「いくらお前でもその発言は聞き捨てならな...」
「いいだろう。」
白鳥の言葉を遮ってその作戦に頷いたのはこのチームの司令塔でもある鬼道であった。
「鬼道さん!?」
こればかりは水神矢も驚いて声を上げた。
「何か策があるんだろう？」
「...はい。」
頷く真っ直ぐなその瞳に、かつての仲間を思い出した鬼道はそれに賭けてみたくなった。
「全員、灰崎を軸に連携する！」
鬼道が言うのなら従わざるを得ない。彼の掛け声に星章学園は声を合わせて「おおっ！」と言い拳を空へと掲げた。
そして雷門ボールから試合が再開され、明日人がトップスピードで上がってゆく。しかし目の前に立ちはだかった灰崎にあっさりとボールを奪われた。
「(絶望ってやつを見せてやる！俺のサッカーは、お前らとは違う！)」
始まりもボールを追うわけも何もかも違うと彼は否定する。ふつふつと湧き上がる怒りをぶつけるように試合へと打ち込む。
「てめぇらのごっことはちげぇんだよ！！」
雷門選手を次々と抜きさり、吠える灰崎に圧倒されていく雷門イレブン。だがその様子を星章ベンチから見ていたAには彼が悲鳴あげているようにしか見えなかった。
「灰崎くん...。」
彼女の瞳に映る灰崎の姿は、どこか悲しげだった。
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作者名：小雪
| 作成日時：2018年6月19日 14時
