母性愛 ページ4
。
そして次の日の朝。いつものように朝練で雷門中にいち早くついた明日人たちは監督に挨拶をし、グラウンドへと横列に並んだ。
「目、腫れてない？」
「腫れてない。」
昨日泣き疲れたせいもあり、気にしていた明日人は目をぱちぱちと瞬きをさせてAに聞いた。
「本当？」
「本当よ。ほら、分かったらちゃんと前向く。」
明日人の頬をむにむにと触り、左右に引っ張ると彼は「なにするの」とムスッとした顔になりいつもどおりの笑顔を取り戻す。
「皆さんおはようございます。」
丁度いいタイミングで監督がグラウンドへとやってくる。手には練習メニューのノートを持っていた。そのノートをAに手渡す。ノートを受け取った彼女はぺらぺらとめくり、ひと通り目を通す。
「あなたたちには、対星章の切り札を見につける特訓をしてもらいます。」
人差し指を立て、説明をする監督に服部はネタ切れじゃなくてよかったとホッと安心の溜息をつく。明日人もまた新たな特訓に意気込んでいた。
「普通に元気だな。」
「たく、心配させやがって。」
そんな明日人を遠目に見ていた万作、氷浦はてっきり落ち込んでいるものだと思っていたために困ったように笑い合った。
「それが明日人のいいところでしょ？」
のりかがひょっこりと氷浦の隣に現れ会話に参加した。
「ほんと、立派になったわね、明日人。」
「なんだか日暮...。」
最初の頃に比べて随分とたくましくなった明日人の成長にしんみりとしていると万作がポツリと呟いた。
「なに？」
「なんてゆうか...明日人の母さんみたいだよな。」
思わぬ発言に「は？」と声が漏れる。
「確かにA、何かと明日人のことになると必死になってるもんね！母性愛って言うのかな？」
「ちょっと待って待って！昨日は告白だのなんだの言ってたのに次は母親!?」
話がだんだんと飛躍されていき、のりかの突拍子もない言葉にあたふたと慌てるA。何故か氷浦はホッと表情をしていた。
「氷浦くんも何とか言ってやってよ!?」
「さあ...どうかな、日暮 面倒見いいからさ。」
フォローを求めていたはずが氷浦ですらクスリと笑い、母親ポジションの立ち位置についてしまうA。
「だいたい、明日人みたいな子いらな...」
「みんな、行こう！」
ちらっと明日人を見ると、彼はメンバーたちを明るい声で引っ張っていき周りも明日人の気持ちに応えていた。確かに彼を見ているとどこか放っておけない気持ちがいつしか芽生えていた。
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作者名：小雪
| 作成日時：2018年6月19日 14時
