冷やかし ページ29
。
そんな彼女の姿に優しいような皮肉なような独特の微笑をした灰崎はタオルを受け取るとAの頭にそっと手を乗せた。
「灰崎くん...？わっ!?」
「可愛げのねぇ声。」
乱暴に頭を撫でられ、髪の毛がくしゃくしゃと乱れてAはムッとして不服そうな顔をする。
「...悪かった。」
頭をぐっと手で抑えられているため灰崎の表情は分からないが、消え入るような声で彼女に謝った。
「何が？」
きょとんとした表情でクエスチョンマークを浮かべ、目を丸めるA。
「なっ...てめっ！わかるだろ普通!?」
指を突きつけて取り乱す灰崎に、Aは意味を理解した途端に ぼんっと爆発したかのような音を立てて顔をゆでダコのように真っ赤に染め上げた。
「あ、あれはノーカン!! 仕方ないことだから、灰崎くんも私もきっとどうかしてたのよ！」
顔をぶんぶんと横に振り、両手を前に出しながら早口で弁解する彼女の焦り方は手のひらの汗までわかるようなほどだった。
「ほ、ほら！人は寂しいと誰かに縋りたくなるって言うか.....っじゃなくて！」
ポロっと口に出した言葉。自ら墓穴を掘り、Aは差恥から再び頬を火照らせた。
「お熱いねー。」
「俺たちに気にせず続けていいぜ。」
ロボットのようにギギギと後ろを振り返ると、佐曽塚と早乙女が手を口元に当てながら ニタニタと笑っていた。
「何笑ってんのよバカ！」
用意していたボトルを容赦なく投げつけると、早乙女が素早く避けたため、その後にいた佐曽塚の額にクリーンヒットしてしまう。その場に倒れ、目をグルグルと回す佐曽塚。
「危なかったー。」
「何気に避けたんだな、お前。」
口をはんば開いたまま折緒は早乙女に話しを投げかけた。一方で早乙女は「まあね」とピースサインをして余裕の表情である。
「ほんとデリカシーないんだから。」
文句を言いながら救急箱から絆創膏を取り出し、佐曽塚の額にぺたりと貼り付ける。
「まあまあ。」
「早乙女くんもだからね!?」
他人事のように宥めてくる早乙女にAは思わずツッコミを入れた。
「灰崎くんも何とか言ってやって！」
先程までそこにいたはずの灰崎が見当たらない。右左と辺りを見渡していると水分補給をしていた水神矢が口を開き、こう言った。
「灰崎なら雷門の稲森と話しているぞ。」
「明日人と...？」
指をさすその先を辿るとそこには明日人と柔らかい表情で話している灰崎の姿があった。楽しそうに話す彼の姿に、ふっと笑みが溢れる。
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作者名：小雪
| 作成日時：2018年6月19日 14時
