壮絶！嵐の最終局面!! ページ28
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灰崎の闘志に炎が宿り、それは星章学園全体をも照らした。残り時間も着々と迫る中で選手たちはそれぞれのポジションへと散らばってゆく。
「アイツが俺をキャプテンと呼ぶとはな...。」
ふっ、と優しく微笑み前線に立つ灰崎の背中を見つめながら水神矢が呟いた。
「頑張ってね、キャプテン！」
少し悪ふざけで"キャプテン"と茶化してみれば水神矢はこそばゆいのか頬をぽりぽりとかきながら「やめてくれ」と恥ずかしそうに言う。
すると水神矢を呼ぶ白鳥の声が聞こえた。
「じゃあ私は行くね。ベンチから応援してる！」
背を向けてベンチへと足を進めたAの名を水神矢が呼んだ。振り返るとそこには先程とは違う真剣な顔立ちの姿があった。
「..見守っていてくれ、日暮。俺たちの戦いを最後まで、一番傍で見ていてほしい。」
コバルトブルーの瞳がAを射抜いた。吸い込まれそうなくらい綺麗な瞳に思わず見とれていると、白鳥に呼ばれた水神矢はポジションへ戻って行く。
「見守ってるよ、水神矢くん。」
ベンチへと戻る足を止め、審判から少し離れた位置へと移動したAは胸の真ん中で手を合わせながら祈るようにポーズをとった。
試合が再開され、灰崎がトップスピードで上がってゆく。その前に立ちはだかる万作、道成。
「ここは通すわけには行かない！」
「打たせん！」
激しい攻防戦が始まり、ボールの凄まじい奪い合いに両者一歩も譲らない。会場の観客達に見守られながら、試合終了のホイッスルがスタジアム全体に響き渡った。
「負けちゃった...(でも、不思議と悔しくないのは何でかな。)」
深呼吸を繰り返し、顔をふっと上げたAの表情にもう迷いや曇はなかった。歓声が湧き上がるスタジアムの中で敗北した星章学園は落胆していた。
「これが...雷門だと？」
膝をつき、悔しそうに歯を食いしばる灰崎だったが彼もまた心の中のモヤモヤが消えたことに快感を覚えていた。
「やったー！」
全国への出場を果たした雷門イレブンは飛び跳ね、それぞれの選手たちは喜びを分かちあっていた。見事、逆転勝ちを果たした彼らには盛大な拍手が送られた。
「負けた...か。」
「でも、いい試合だったよな。」
スコアボードを見上げ、負けたことを改めて実感した水神矢の肩に手を置いた白鳥。悔しい気持ちはあれど、選手たちは笑みを浮かべていた。
「お疲れ様、灰崎くん。」
ベンチへと戻ってきた灰崎に、Aは今までで一番眩しいくらいの笑顔で彼を出迎えた。
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作者名：小雪
| 作成日時：2018年6月19日 14時
