時を超えた想いを4【アレスの天秤】 (ページ25)

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裏目ページ25

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「日暮ちゃんにも日暮ちゃんなりのプライドがあるんでしょうけど、強化委員なんて大役をやめて一からサッカーを学んではいかがでしょうか？」

遠回しに言われた"強化委員を下りろ"と促すような発言はどんなに錆びたナイフでも簡単にAの心を抉るには十分な言葉であった。

「そうやって感情的になってしまうのも、日暮ちゃんの悪いところですねぇ。」

いつものように高笑いをしている監督の戯れ言なのに、今はそれさえも癇に障る。ガリ、っという音が鳴り響き唇を強く噛みしめる。何度も噛んだのか、痛々しいほどの痕が唇に残り、端からは血が流れていた。

「...余計なお世話よ!!!!」

怒り、嫉妬、悲しみ。色々な感情がごちゃまぜになり彼女の心を支配する。この監督が就任してから掻き乱されてばかりだ。それ以上何も反論出来なかったAはその場から消え去るように星章ベンチへと戻っていった。

その直後、小僧丸、氷浦、明日人の新たな連携技で星章は失点を重ねてしまう。雷門の同点ゴールが決まった瞬間であった。

「バカな！こいつら、まだこんな力を...！」

髪の毛をぐっと握りしめ、怒りをあらわにする灰崎に雷門は体力を温存していたと鬼道は行った。星章学園は灰崎を中心とした攻撃で雷門にゾーンプレスをかけていた。

「作戦が裏目に出たようだな」

監督の言葉にAは瞠若した。

「灰崎を中心としたプレーで、四人の選手がFWのマークについていた。だが、稲森を意識するあまり他の選手の動きをアイツらは見逃していたんだ。」

足を組み、淡々した口調で論説をした。全員守備だと決めつけていただけで、いざ箱を開けてみるとそんな動きをしていたのは明日人のみであった。

雷門選手は体力を温存し、明日人のみが体力の限界を超えていた。星章学園は今までずっと趙金雲の手の内で踊らされていたのだ。

「(バカだ、私。皆の反対を押し切って...せっかく鬼道さんが信じてくれたのに...その結果がこんな...)」

しきりに自責の念が湧き、屈辱感で体が小刻みに震える。

「趙金雲の言うとおり、お前は強化委員としても監視役としても向いていない。選手の道へ進む選択もあるだろう。」

「そう...ですか。」

体の中から何かが落下していくような感じがした。顔を伏せたきりで口も利けないように打ちひしがれる
「だが、お前には可能性がある。」

「可能性...？」

久遠監督の"可能性"という言葉に俯いていた顔を上げて監督へ顔を向けたA。