治療 ページ22
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なんとかボールをカットし、万作へとパスを繋げた明日人だったがその反動で軸足が痛みその場で蹲ってしまう。
「(コイツ、足に怪我を？...だからあの女も救急箱を持ってやがったのか。)」
「明日人！！」
蹲る明日人を横目に、心配のあまりベンチから救急箱を手にこちらまで駆け寄ってきたAを灰崎は見ていた。
「いいんですか、監督？日暮を行かせて。」
「好きにさせろ。」
帽子を深くかぶり直し、久遠がそう言うとコーチも黙ってAの行動を見つめていた。救急箱を片手に、コート外ギリギリにたどり着くとAは明日人に声をかける。
「明日人、フィールドから出て！」
「A...いっ...！」
立ち上がろうとした明日人だが、足に負担がかかり顔を歪めて再び地面に手をついた。
「水神矢くんにボールをカットされた時、足を挫いたんでしょ？...早く治療しないと取り返しがつかなくなるわ。」
選手以外の者が立ち入ることは出来ないフィールドを今は恨むA。痛がる明日人の背中を優しく揺すってやることすらできない。
「大丈夫だよ。」
「明日人...？」
思わぬ明日人の言葉に、Aは目を見開く。
「俺は大丈夫！ありがとうA。俺のために心配して来てくれたんでしょ？」
にかっと歯を見せて大きく笑う明日人。しかしその表情はどこか痛々しく、無理をして笑っているのが丸わかりだ。
「あ...あんたバカ!?治療なしに 走り続けてたら一生サッカーができなくなるかもしれないのよ!?」
捻挫をしているその足を指差ししてことの重大さを必死に明日人へ伝える。試合をこのまま続行していれば最悪、悪化して使い物にならなくなる。
「それでもだよ！俺たちは負けられないんだ。この足だって、きっとなんとか持ちこたえてくれる！」
大丈夫だという根拠もないのに、何故か笑顔の明日人を見ていると安心させられてしまう。
「明日...ッ！」
「コイツに何言っても無駄だぜ。」
問答無用で連れていこうとフィールドに足を踏み入れようとしたが、灰崎に止められる。
「でも灰崎くん...！」
「でももだからもねぇよ。分かったらその邪魔なもん閉まってベンチに座ってろ。」
有無を言わぬ灰崎に返す言葉が見つからないAは後ろ髪を引かれながらも重たい足取りでベンチへと戻っていった。
その後も両チームともに激しいボールの奪い合いとなり、体力が削られているにも関わらずそれを思わせないプレーに会場の熱気は最高潮だ。
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作者名：小雪
| 作成日時：2018年6月19日 14時
