時を超えた想いを4【アレスの天秤】 (ページ21)

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除名処分ページ21

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コーチから貸していただいたタブレットを下へとスクロールし、一通り目をとおしているとある不思議な点を見つけた。

「これ、おかしくないですか？辞任ではなく除名処分って書かれてますけど...。」

「どういうことだ？」

引退というのは、辞任のものばかりだと思っていたAは不思議そうに指を指して監督にタブレットを手渡した。

「詳しいことは分かりませんが、サッカーへの侮辱が理由のようです。」

「サッカーへの侮辱？」

思わず監督が聞き返す。コーチ曰く、世界サッカーに対して批判的な行動をしたとして引退をさせられたらしい。そして今、何の前触れもなく趙金雲は雷門の監督となり復帰している。

「あの監督がそんなことをするような人だとは思えません。確かにちょっと変な所はあるけど...。」

批判的な事とは、一体どのような行動だったのかだろうか。趙金雲の人柄からしてそのようなことを言う人とは思えないと頭を悩ませるA。

「(それより、監督があのスタンフォードに通ってたなんて...。)」

スタンフォード大学と言えば世界の有名校の五本指に入るほどの名門校だ。

「(ううん、それだけじゃない。人とは違う視点から作戦を練って裏をかく才能があるんだ...。生まれ持った才能が、あの人には。)」

ガリ、っと唇を強く噛み締めたせいで口の中に血の味が広がる。悔しいが、どんなに努力をしても天性には抗えないものがやはりあった。

「(星章が一点リードしてる。普通ならこのまま勝てる。なのに監督はどうして一度も動かないの？何で、雷門はあんな余裕な顔をしてられるの？)」

このまま負ければ雷門の決勝進出の希望は完全になくなるというのに彼らに焦りの色は一切見えない。

雷門の手の内が見えぬまま、試合再開のホイッスルが鳴り響いた。会場の熱気が再び沸き上がり、明日人から小僧丸へとパスが繰り出されるが灰崎によりボールをカットされてしまう。

「見せてやるよ、お前達の現実をな！」

灰崎の猛攻に再び三人がかりでマークをする雷門。だがしかし同じ手に何度も引っかからないと言わんばかりにボールを中央へと蹴り上げた。

「ミスキック...でしょうか？」

「スピンがかかってる...多分あれは」

春奈が不思議そうに首を傾げていると、Aはボールの回転を見て一人ワンツーだと判断した。灰崎の予想外の行動に万作たちは抜かれ、明日人と灰崎の一騎打ちとなる。