時を超えた想いを2【アレスの天秤】 (ページ49)

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見舞い品ページ49

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気を取り直してクレーンをクマの元へと運ぶと、上手く耳に引っかかったのか、一発で取ることができた。ぶら下がったクマは揺られながらポストへと落ちる。

「やった！取れた！！」

落ちてきたクマを大事に抱きしめ、喜ぶA。

「この調子であともう一回頼むわよ～。」

一度取ったのに飽き足らず、Aは再びコインを二百円投下する。取れたばかりのクマを野坂に預け、荷物持ち状態にする彼女もある意味強者なのかもしれない。

「こんなクマ、二つもいらないでしょ。」

「一つは自分用。今取ってるのはお見舞い品。」

大きいだけで邪魔のような目で抱き上げたクマを見つめる野坂。Aは慣れた手つきで操作しながら話す。

「見舞い？」

「知り合いの幼馴染みがね。その子、昔からクマが好きみたいだからプレゼントしたらきっと喜ぶと思うのよね。」

少しでも喜んでもらえればというAのささやかな願いは野坂の次の言葉によって否定される。

「･･･その子、クマなんてもう好きじゃないと思うよ。」

「会ったこともない野坂くんがどうしてそんなことわかるのよ？それに、クマかわいいし。」

先程とは少し違った声色に、野坂は気がついた。冷めた声とでも言うのだろうか。彼女自身は意識していないのか、見事に二つ目のクマをGETし、喜んでいた。

「ほら、かわいい。ねっ？」

クマの横から顔を出し、クマの可愛さアピールをするAだが野坂には何も響かない。

「じゃあ私、そろそろ帰るわね。荷物持ってくれてありがとう。これはお礼！」

取ったばかりのクマを丁寧にゲームセンターにある袋に入れると、Aは野坂の手に半場強引に小さいクマのキーホルダーを手渡すとそのまま帰ってしまう。

「･･･灰崎くんが興味を持つのも、少し分かった気がするな。」

一人残された野坂は、押し付けられたクマのキーホルダーを見つめながら一人呟いたのだった。

そして事情を知らない明日人たちは鼻歌交じりに帰宅したAの様子に驚きつつも、何があったのかと彼女を観察していた。

「随分ご機嫌だな。」

「あのあと何かあったのかな？」

上から道成、明日人が食卓部屋に入ったAの後をそっとつけて話し合う。

「聞いてみた方が早ぇんじゃねぇか？」

「一々聞けるかよそんなこと！」

コソコソするのが苦手な剛陣は直接聞くよう提案するが、デリカシーがある小僧丸が即否定した。