時を超えた想いを2【アレスの天秤】 (ページ42)

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逆転勝利ページ42

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ラインぎりぎりのところでなんとかボールへと追いついた灰崎は折緒、佐曽塚を引き連れ、ゴール前まで上がってゆく。

「デスゾーン開始！」

灰崎の言葉と共に陣形を作り、シュート体勢に入った折緒たちはボールを上空へと蹴りあげると鬼道から伝授された帝国の必殺技、デスゾーンを放つ。

【ゴール！】

強烈な三人の連携必殺シュートは、木戸川清修のゴールを貫いた。それと同時に試合終了のホイッスルが会場へ鳴り響く。

「やった！やったわよAちゃん！」

勝ったことに実感が湧かず、呆然としていたAの肩を揺する春奈。

「･･･勝った、勝ったの？」

「本当よ！ほら見て！」

電光掲示板に映し出された勝利の文字は、Aの瞳を潤ませる。

「やった、やったんだ･･･本当にっ！」

溢れ出る涙を指で救い、喜びを噛み締めるA。この試合のMVPは灰崎凌兵へと決まったが、誰も文句を言うものはいないだろう。

「灰崎くん!!」

試合に勝利した星章イレブンは、喜びを分かち合いながらベンチに戻ってくる。Aは真っ先に相変わらず一人でいる灰崎の元へと駆け寄った。

「何泣きそうな面してんだ。ちゃんと勝っただろうが。」

瞳を潤ませているAに灰崎はドリンクを片手に口を開いた。

「そうなんだけど、嬉しくて！」

「･･･単純な女。」

だが、不思議と悪い気はしない。目の前で喜ぶAの姿に笑みが少しこぼれる灰崎。

「MVPおめでとう、灰崎くん！」

「興味ねーよ、そんなもん。」

ぶっきらぼうな言葉とは裏腹に、優しく頭に手を置いて優しい表情をする灰崎にAは目を丸めた後、頬を染め顔を逸らす。

あれからメンバーたちに祝福の言葉と共に皆と勝利を分かち合うとそれぞれは着替えるために更衣室へと足を運んでいた。その道中で、Aは灰崎と話し込んでいた。

「灰崎くん、この間はごめん。」

「･･･何だ急に。」

Aの歩幅に合わせて歩いていた灰崎の足がその場で止まる。

「急じゃないわよ、あれからずっと謝り方とか色々考えてたんだから。」

「二度と関わるなっつったのに謝り方とか考えてたのか？お前。」

普通そんなことを言われたら謝罪の言葉など考えず、そこで縁は切れるはずだ。なのに思いつめていたAの行動に灰崎は"バカか"という意味を込めて言い放った。

「許してもらうつもりで謝ろうなんて思わなかった。ただ、怖かったの。･･･嫌われるのが。」

身体が震えるのが、自分でも分かった。