後悔 ページ21
。
ピリピリとした食卓の空気の中で食事が喉を通らない。なんとも言えない気まずい空気の中で、小僧丸の声だけが響く。
「灰崎と何があったかしらねぇけどな、お前のイライラを関係ない俺やこいつらにぶつけるのはやめろ。はっきり言って迷惑だ。」
「こ、小僧丸！」
さすがに言い過ぎだと、Aに気を使う明日人。それと同時にAが何も言わず勢いよく立ち上がった。再び静まり返る食卓。
「もういいのかい？」
「ごめんなさい。」
あまり食べていない食器を持つAはヨネさんに謝りながら配膳台に置く。
「日暮、後は俺が片付けておくから。」
事情は分からなかったが、Aを心配していた氷浦
が彼女から食器を受け取り優しく声をかける。
「無理しないで、話すのは日暮が落ち着いてからでいいから。」
「･･･ありがとう、ごめん。」
氷浦の優しい言葉がAの深く傷ついた心を癒す。
枯れたはずの涙が再び出ようとしたが、ぐっと堪えて泣きそうな声でお礼を言うと食卓を後にした。
自室に戻り、酷く疲れた身体をベッドに沈み込むように横たわるA。少なからず皆に嫌な空気を感じさせてしまったことに後悔していた。
「皆は悪くないのに･･･酷いことしたな。」
小僧丸に言われた事を思い返しながら枕を強く抱きしめて顔を埋めるA。スマホにメールが届き、水神矢から明日のことについての連絡であった。
「(灰崎くん、試合には行かないって言ってたからきっと大丈夫･･･大丈夫よね。)」
明日の試合には久遠監督直々から呼ばれており、行かなければならなかった。灰崎自身が行かないと行っていたが、胸騒ぎがするA。
「･･･鬼道さん？」
スマホから着信が鳴り響き、表示された文字に不思議に思いながらも電話に出る。
「久しぶりだな。」
「･･･お久しぶりです。」
いつぶりが分からない程に懐かしい声が電話越しに聞こえてきた。
「声色が優れないようだが、灰崎のことでなにかあったのか？」
「どうして･･･。」
その事が分かるのだろうか。図星だったAは自分がそれほど分かりやすいのかと考えてしまう。
「あいつもそうだったからな。」
あいつ、とは灰崎のことだろう。Aに掛ける前に彼とも電話をしていたらしい。
「鬼道さん、私 どうしたらいいですか。」
震える声でかつての仲間にうったえた。答えが欲しかったのだとAは思う。やってきたことを正しいと言ってほしかったのだ。
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作者名：小雪
| 作成日時：2018年4月28日 12時
