反対 ページ3
。
「勝つ気あんのか!?あんたの言うこと、勝つことの反対のことばっかじゃねーか！」
今にも監督へ掴みかかりそうな勢いで詰め寄る剛陣の最大のヒントとも言える言葉がAと小僧丸の耳に引っかかった。
"進むべき道が前に見えないなら、反対側を見ろ"
「反対側を･･･」
依然、憧れの豪炎寺から言われた言葉をふと思い出した小僧丸。
「(反対･･･。そういうことだったのね。)」
今まで複雑に絡み合っていた糸が一つに繋がるのを感じたAは意を決して手を叩く。
「みんな、今は監督の指示に従って。」
「日暮、お前まで何言い出すんだよ！」
手を叩いたことにより、自然とAへと注目が集まる。そして彼女の発言に剛陣が思わず胸倉を掴んだ。
「剛陣！」
「勝ちたいなら！」
胸倉を掴む剛陣を止めようと、道成が仲裁に入ろうとした際Aが大きな声で言い放った。
「本当に勝ちたいのなら、今は従ってください。･･･お願いします。」
「日暮･･･。」
胸倉を掴まれながらも真っ直ぐな瞳で剛陣を見つめるAに氷浦はつい、彼女の名前を呼んだ。
「私の指示じゃ、とてもじゃないけど勝てる確信がありません。でもきっと監督なら･･･」
「勝てるっていうのか？」
Aは小さく頷く。流れる沈黙の時間にマネージャーであるつくしが二人の姿を見守る。
「剛陣先輩、手を離してあげてください。」
「･･･氷浦。」
見兼ねた氷浦が剛陣の肩に手を置き、彼は渋々掴んでいた胸ぐらを離した。
「Aは監督の指示の意味がわかったんだよね？」
明日人がAに近づき、話しかけると彼女は頷く。
「なら俺は信じて従うよ」
「明日人。」
工事業者に真っ直ぐ立ち向かっていった明日人のあの時と同じ瞳に、Aは目がはなせなかった。
「な、氷浦？」
「えっ･･･あ、ああ。」
話が振られると思わなかった氷浦は思わず取り乱す。
「氷浦くん、ボトル。」
「マネージャーから貰ってくるから、大丈夫。」
Aがボトルとタオルを手渡そうとベンチへ向かおうとするが、それは氷浦自身に腕を掴まれ、止められる。
「日暮は悪くないから。」
「え？」
「俺の問題だから･･･ごめん。」
氷浦の表情が見えることはない。"自分自身の問題"確かにそう言っていた。Aは去りゆく彼の後ろ姿を寂しげに見守った。
「(本当、何してるんだ俺は。)」
未だ鳴り止まない胸の鼓動に悩まされながら、氷浦は胸に手を当てていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 317人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小雪
| 作成日時：2018年4月28日 12時
