涙 ページ32
。
ひとつ、またひとつと零れ落ちていく明日人の涙に辺りは静寂に包まれる。
「ここで、サッカーができると思ったのに･･･母ちゃん、ごめん。俺」
口から出た言葉は今は亡き母への謝罪。
そして今まで心に閉じ込めていた"悔しい"という気持ち。
「俺たち、もっとサッカーしたかった･･･。」
「半ちゃん･･･」
明日人が流した涙により、今まで我慢していた皆の堰(せき)が切れた。
「や、やめてよみんな･･･ 私まで泣きそうになっちゃうじゃない･･･。」
今まで笑っていたのりかですら、Aに泣きついていた。その影響を受け、彼女も視界が涙で歪みだす。
「おいおい、こんなところでかよ･･･」
自分を除く全員が公共の場で涙を流す。
周りからの視線に小僧丸は頭をかきながら気まずそうに目をそらした。
「はいはい、雷門イレブンの皆さん。あなた方のプレーには感動いたしました。実に素晴らしい。」
突然手を叩きながら現れた第三者に今まで泣いていた者達は黙り込み男を見つめた。
「誰、ですか？」
「あ、あなたは･･･アイランド観光の」
涙を拭う明日人の隣で、Aは見覚えのある驚きの人物を前に涙が引っ込んだ。
「お久しぶりです日暮さん。私、アイランド観光の社長"島袋幾太郎"と申します」
優しい笑みで名刺を改めてAに手渡す。
その名刺を受け取ると皆が彼女の周りに集まりそれを見つめた。
「あのアイランド観光!?」
「有名か？」
驚くのりかに、無頓着な剛陣が不思議そうに聞く。
「大手の旅行会社ですよ！」
名刺を見ながら奥入が説明した。
「俺たちのプレイを見てくれたんですね･･･ありがとうございます。」
元気がない声で明日人が言う。
「島袋さん、今回の件 本当にすみませんでした。お時間を取らせてしまい、何とお詫び申し上げたらいいのか･･･本当に･･･本当に申し訳ございません!!」
「A･･･。」
頭を深々と下げ、謝罪をするAの姿。
表情は見えないものの、明日人たちにはその声が今にも泣きそうな声で震えているのが分かった。
「顔をあげてください、日暮さん。･･･むしろその逆です。本当に感動的な試合でした。」
「え･･･？」
肩に手を置かれ、まさか褒められるとは思わなかったのか気の抜けた声が出る。
「でも負けたんですよ!?」
「試合は勝ち負けではありませんよ。」
日和が勢いのあまり口にした。
しかし島袋は顔を横に振ると笑顔で告げた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 693人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小雪
| 作成日時：2018年4月6日 17時
