▷２７ ページ33
.
ほら言わんこっちゃない、とでも言いたげな顔をしてパタパタとキッチンに向かっていく彼。そんな顔されたって熱いものは熱いし、冷めにくいチーズだからしょうがないと私は思う。あと単純に食欲に負けたせいもある。人間の三大欲求に勝てるとでも思ったのか。
口の中でハフハフと熱を逃がしなんとか食べる事には成功。しかし舌はちゃんと火傷していたようでピリピリと痛い。
口内じゃ歯や上顎に当たって痛みを感じるのでんべ、と舌先を少しだけ出して空気に触れされる。これでもまだちょっぴり痛いけど、口の中よりはまだマシだった。
一分も経たない内に彼は戻ってきて、片手には透明なガラスのコップを持っていた。三分の二程注がれているようで、カラン、と涼やかな音が聞こえなかったので氷は入れていないらしい。
入れてくれそうだなと思ってたんだけどな、と考えつつ、氷あったら飲みずらいし良いか、と思考を一転二転とさせて彼が持ってきてくれた水に手を伸ばす。
「だめ。」
「えっ。」
そう言って、何故か遠ざけられるコップ。つい追い掛けるようにさらに伸ばせば、コップを持っていない方の手で手首を掴まれ下ろされてしまう。
そのまま隣の椅子に座った彼はコップを机に置いてから私の体を彼と向き合うように動かし、つ、と頬を撫でてくる。
嫌な予感がした。
「お水、くれないんですか？」
「あげるよ？」
「…渡してくれなかったじゃないですか。」
「っはは、まぁね。」
彼の口元が弧を描く。瞳の奥には愉悦の色が見え隠れしていて、まさか最初からこの展開を想定していたのではないか、と私の中の最悪に等しい考えが浮かんでくる。
頭のいい人の考える事なんて分かるはずもない。けど、数十分間の間の私は彼の手のひらの上で転がされていたのだということだけははっきりと分かった。
私の頬を撫でたままの彼は「どっちがいい？」と問うてくる。
「へ…？」
「コップか、口移しか。どっちいい？俺はAの好きな方でいいよ。」
「…普通に私が飲む、っていうのは、」
「え？口移しがいい？」
「コップでお願いします！」
「ちぇっ。なーんだ。つまんないの。」
「なんで面白さ求めた？？」
む、と口をへの字にする推しはリスナーにとって栄養素が高くて助かるがそれは時と場合によって変わるんだな、という事を知った。
どちらの選択肢であろうと私は彼に水を飲まされるのには変わりなくて、ダメージが少ない方を選ぶしかなかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1405人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イズ - ありがとうございます。楽しみにしてます！ (9月9日 16時) (
レス) id: e7957dca7b (このIDを非表示/違反報告)
ゆずもち@(プロフ) - イズさん» コメントありがとうございます。今日明日公開する予定なので少々お待ちくださいませ。 (9月9日 10時) (レス) id: 893f10864f (このIDを非表示/違反報告)
イズ - はじめまして。いつも楽しく拝読させて頂いています。こちらの続きを読ませていただきたいのですが、当方中国に在住のためTwitterの登録ができずフォローさせていただくことができません。今後作品を公開される予定はありますでしょうか？ (9月9日 3時) (レス) id: e7957dca7b (このIDを非表示/違反報告)
ゆずもち@(プロフ) - どーなつさん» コメントありがとうございます。パスワードですがTwitter(X)をフォローの上、ツイート(ポスト)内容を確認してからDMかましゅまろにてご連絡ください。 (9月5日 19時) (レス) id: 893f10864f (このIDを非表示/違反報告)
どーなつ - 推しに拐われた２の方でパスワードが分からず読めないのですが、どうしたらいいでしょうか。教えてほしいです。 (9月5日 18時) (レス) id: 185f957abc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
