にじゅうご ページ26
( An hour ago - Zenko )
「あゆみは全部持ってるのに」
「え…」
その手に吸い寄せられるように自分の手を近づけると、ぱっと取られて握られる。
まるで、離さないとでもいうかのように。
「幸せな家庭も、友達も、彼氏も、全部持ってるのに、なんで俊くんまで奪っちゃうんだろう」
わたしには、俊くんしかいないのに。
口角を上げたままつぶやく彼女の真意は全く読み取れない。
「だからさ、思い知らせてやろうよ。人は見た目じゃないなんて綺麗事に過ぎないんだって」
「っ、Aだって」
Aの見た目は美しい。
小日向あゆみと同様、いや、それ以上に。
その容姿があればと何度考えたことか、けれど彼女に近づいてはだめだと脳内で何かが繰り返し言うから、小日向あゆみに目を向けた矢先にしろちゃんの優しさに触れて心を解されてしまった。
「なら、わたしたちも入れ替わる？」
「っ、何言って」
「わたしはこの顔大嫌いだもん、あの人に似すぎて吐きそう。それに、」
きょとんと効果音でもつきそうな、まるで日常会話のように話すから、思わず言葉に詰まる。
そのまま彼女は手を離しておもむろにスマホを取り出すと、数回の操作の後にあたしにある画面を見せた。
「な、にこれ、」
「わたしが幼稚園に通ってたときに描いた自分の似顔絵」
映っていたのは、顔が乱雑に黒色で塗りつぶされた絵だった。
ところどころできた隙間から覗くのは、3本の線で簡単に描かれたかわいらしい笑顔。
「小学生のときも、中学生のときも。全部最後まで描ききれずに、自分の顔を見てられずに、こうして塗り潰してた。
一時期は身体醜形障害なんて診断もされた」
ゆっくり横にスワイプすると、出てきた絵にはすべて黒の海が広がっていた。
垣間見える表情も、すべて怖いくらいの笑顔。
初めて、彼女を怖いと感じた。
まるでこの絵たちのようににこにこしてスマホを掲げる彼女はいつも教室で見る姿と何ら変わりないのに、別人である気がしてならなかった。
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ふぅ - 続き楽しみにしてます！ (2021年5月15日 14時) (
レス) id: e27c2c145d (このIDを非表示/違反報告)
なべ(プロフ) - 凄く面白いので続きが読みたいです！更新待ってます！！ (2021年4月5日 18時) (レス) id: f19b1505d1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - コメント失礼します！とても繊細なストーリー好きすぎます…！！またお時間に余裕がありましたら、更新して頂けると嬉しいです！！大好きな作品です！ (2021年2月1日 6時) (レス) id: fd1c6c399d (このIDを非表示/違反報告)
オムライス(プロフ) - 更新頑張ってください！ (2021年1月6日 14時) (レス) id: 3df1040212 (このIDを非表示/違反報告)
冬葉(プロフ) - ptfさん» 返信ありがとうございます！楽しみに待たせていたただきますね！ (2020年6月29日 17時) (レス) id: 8304f0e3e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ptf | 作成日時：2019年7月22日 23時
