じゅうなな ページ18
「A。基本なんでもできるくせに、絵だけは全然あかんねん」
「A……」
愛おしそうに笑う彼の頭には、やはり彼女が浮かんでいた。
そしてあたしの頭にも、授業中にコソコソと2人で1冊の教科書に落書きをしているときのあの子の無邪気な横顔がはっきりと映し出されている。
彼女の絵をあたしが下手だと指摘すると少し頬を膨らませて、前で頭が船を漕いでいる火賀くんを起こすようにご丁寧に教科書を彼の机にバンッと返していたり。
驚いて肩を揺らす火賀くんに、怒った？なんて首を傾げてあざとく聞くものだから、何も言えなくなっている火賀くんを見て大変そうだと同情したのは記憶に新しい。
思わず笑みを零すと、火賀くんは怪訝そうにこちらを一瞥したあと、少し声のトーンを落として言った。
「あ、そういや。海根さん昨日教材運ぶの全部Aに任せて帰ったやろ」
彼が言っているのは、きっと海根さんと屋上で話していた間のこと。
本当はあの後美術室に帰って手伝おうと思ったけれど、インコを拾ってしまったし、何より「海根さん」とあのふわりとした笑みを向けられてしまえば、それこそ全てが終わる気がして彼女のいない隙に逃げ帰ってしまった。
( Yesterday - Ayumi )
ちょっとは苦しみなよ、そう言う彼女の顔は憎しみに満ちていた。
想像を超える彼女の黒い感情にたじろいで口を噤んでしまったが、これだけはと彼女に静止をかける。
なぜ海根さんはあたしになりたかったのか。
彼女は得意げに笑ったあと、あたしの声でしっかりと、しろちゃんとAの名前を口にした。
やはりあの日Aが言っていたことは正しかった。
きっと告白されているところを彼女に見られていたのだと、そして彼女はしろちゃんに恋をしていたのだと、あたしが彼女の恋の芽を摘んでしまったのだと悟った。
でも、なんで。
「A…？」
「…Aは、あたしに優しかった」
それだけ、そう言って去っていく彼女の瞳は、少しだけ揺らいでいた。
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ふぅ - 続き楽しみにしてます！ (2021年5月15日 14時) (
レス) id: e27c2c145d (このIDを非表示/違反報告)
なべ(プロフ) - 凄く面白いので続きが読みたいです！更新待ってます！！ (2021年4月5日 18時) (レス) id: f19b1505d1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - コメント失礼します！とても繊細なストーリー好きすぎます…！！またお時間に余裕がありましたら、更新して頂けると嬉しいです！！大好きな作品です！ (2021年2月1日 6時) (レス) id: fd1c6c399d (このIDを非表示/違反報告)
オムライス(プロフ) - 更新頑張ってください！ (2021年1月6日 14時) (レス) id: 3df1040212 (このIDを非表示/違反報告)
冬葉(プロフ) - ptfさん» 返信ありがとうございます！楽しみに待たせていたただきますね！ (2020年6月29日 17時) (レス) id: 8304f0e3e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ptf | 作成日時：2019年7月22日 23時
