―甘い旋律に魅せられて＃2―【神童拓人】 (ページ17)

今日:3 hit、昨日:4 hit、合計:32,437 hit

Melody44 ページ17

一分一秒が惜しかった。

時間との戦い。

全ての時間をフルートに捧げた。

わたしの全てを音楽に捧げた。

「 ……… 」

開演を告げるベルが鳴った。

緊張で震えが止まらない手で、フルートをぎゅっと握りしめる。

自信なんかない。

不安でいっぱい。

拓人先輩が作った曲。

一音、一音に込められた願い。

甘い旋律に込められた想い。

最後まで分からなかった。

拓人先輩がどんな想いを込めたのか、

何を伝えたかったのか、

わたしには分からなかった。

「雪宮さん、準備お願いします」

ついに呼ばれた。

わたしの出番が迫っている。

「はい…… 」

わたしは一人、舞台袖へと移動する。

緊張がピークに達していた。

拓人先輩……

会いたい。

会いたい。

今、拓人先輩に会いたい。