―心から君を愛したい 2nd―【神童拓人】 (ページ31)

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Story66 ページ31

時間が経つにつれ､Aの病室は看護師と医者が激しく出入りする｡

何時間も続くそれを､ただただ祈るような気持ちで見ていた｡

それから天馬には天界へ帰ってもらった｡

指導者として失格だが､Aが安定した時に傍にいたい｡

そう思ったから｡

天馬は｢まだ掃除が終わってなかったから丁度良かったです｣と､

何も聞かずに行ってくれた｡

もし…。

天馬にあれこれ聞かれていたら、俺はきっとこの仕事を断念していた。

初めは人間に情を移されるなんて馬鹿馬鹿しいと思ってたのに…。

今ではこんなにも、Aを愛おしく思う。

・

・

それからまた数時間が経って、

｢心拍数､脈拍､共に安定しました… ｣

と､一人の看護師が言って｡

Aの心拍が規則的なリズムになると

病室にいる全員がホッと一息ついたのが分かった｡

それからぞろぞろと病室から人が出て行き始め､中に入ろうとした時｡

一人だけ､病室に残りAの手を握る医者がいた｡

歳は40代前後の優しい雰囲気漂わせる男性…。

その人は、窓の外に視線を向けると、

｢入って来てもいいですよ｣

とでも言うように、俺にバッチリ視線を絡ませた｡

…俺が見えるのか？

男性は、優しく微笑んで手招きした。

その笑顔に、なんだか見覚えがあった。

｢昔から霊感があってね｣

と､俺が病室に入ると言った｡

俺は男性の向かいに座って､Aを見つめた｡

青白い肌が生々しかった｡