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「いってきます。」
涼風の扉を閉めて仲見世通りに出ると
たくさんの人達の声や海の香り、街灯の灯りと空気感
全てがわたしの知っている
ほろ苦くて、暖かくて、懐かしくて
そんな場所
人混みの中、灯りに照らされた【碧】の看板に向かって歩き出した。
店先に着くと、いつものクタクタのTシャツに腰巻のエプロン姿でお客さんと楽しそうに話しながら焼き場に立っている倫也さんがいた
少し離れた場所からその光景を見て
去年のことをまた思い出したりして
なんだかすごい前のことみたいに思えた
最近は東京で会う事が多かったせいもあって
『服、これしかない。』っていつもおんなじシャツを大事に着てくれていた倫也さんにいくつかわたしの趣味でお洋服を選んだ。
何を着ても似合ってしまうし、すごくオシャレでそんな倫也さんはやっぱりきっと素材がいいんだろうなぁ。なんて関心したりもしていた
だけど、
やっぱりあれから何回かこの街に遊びに来て
その度にこのいつもと変わらない働く姿の倫也さんに会って
結局わたしは
この姿がいちばんスキなんだって気づいた...
〔あ!Aさ〜ん!〕
一際大きな声に目を向けると入り口で大海くんが手を振っている
わたしも手を振りかえすと、
その声に気づいた倫也さんもこちらに向いてニコッと笑った。
〔こっち来てくださいー!〕
そう言われて近づくと、〔すぐ俺代わるんで、ここで待ってて下さいね!〕と言って焼き場に向かっていった。
「大海くん!急がなくていいよ!」
そう呼びかけたけど、手をパッと上に上げて微笑んで〔いーから!〕と笑っていた。
〈待っててって言うならお茶くらい渡していけよって感じですよね!ほんとすいません。そこ座れるんで待ってて下さい。〉
スッと差し出されたお茶とおだんごのセットに顔を上げると呆れたような申し訳ないような顔の真夏ちゃんが居た。
「いいのいいの!本当気にしないで!」
〈いえいえ、元はと言えばうちの店長さんがもっとしっかり段取りしてればなので。そしてうちにもっとバイトが居れば...はぁ。〉
「ううん、こんな忙しい日にこっちこそごめんね。ちょっと見たらすぐ戻ってくるから。」
〈いえっ、大丈夫です!おじさんひとり抜けても若者ふたりなんで全然余裕です。笑〉
「〈あはははは!」〉
真夏ちゃんとこんなに笑い合える日が来るなんて
思いもしなかった
胸は熱くなって
そして嬉しさで少し泣きそうにもなった...
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RJS(プロフ) - 葵さん☆なんて嬉しいお言葉...涙が出そうなくらい嬉しいです。景色が目に浮かぶ様な物語が描きたかったので思いが伝わった気持ちになりました...。幸せです!言葉でお伝え下さって本当にありがとうございます。幸せに眠りまーす♡ (9月16日 2時) (レス) id: acf635abfc (このIDを非表示/違反報告)
葵 - まるで一本の映画を見ているような気持ちになり、一気に読み切ってしまいました。本当に素敵な作品ありがとうございます!空と海の碧さと夏の暑さが入り混じって、優しくて、もどかしくて。素敵な世界をありがとうございます♡˒˒ (9月15日 20時) (レス) @page24 id: e59d00ee3d (このIDを非表示/違反報告)
RJS(プロフ) - ゆずはさん» ゆずはさん☆コメントありがとうございます。読み返してもらえるなんて幸せな作品です!本文にも書きましたが、まだ頭の中にあるものがあります。それをうまくかたちにできるよう頑張りますので是非お付き合い頂ければ嬉しいです。最後までありがとうございました! (2022年2月13日 9時) (レス) @page24 id: acf635abfc (このIDを非表示/違反報告)
ゆずは(プロフ) - ついに終わってしまった、、。とても幸せな気持ちになれる作品でした。RJSさんが作り出す倫也さんが大好きで何度も読み返してました笑笑また新しい作品で出会えたらぜひ見に来たいと思います!! (2022年2月12日 23時) (レス) id: d5f1772468 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RJS | 作成日時:2022年1月18日 9時