恋花火。...4

163. ページ13

「...キス。」





俺の耳にはそう聞こえた

いやいや、勝手に良いように解釈すんな

多分、違う。

この子がそんなこと言うはずないだろ

だったらなんて言ったんだ...？





振り向いた瞬間に頬を包む折れそうに細くてだけど暖かい君の手のひら

同時に目の前に映った桜色の頬と閉じられた瞳から伸びる長くて綺麗な睫毛

唇に当たる甘く柔らかく暖かい体温



俺は

目を閉じることも忘れていた...




すぐに離れた体温

見上げて微笑む君は

俺の目にかかった前髪を指で払って優しく微笑んだ



胸の奥のもっと奥

一生懸命奥へ奥へとしまっていた俺の自制というスイッチを君は正面突破で簡単に壊した...



俺はコントローラーをコトッとテーブルに置いて

君に向き返って目の前にへたっと座っている君の手と頬に触れた

くすぐったそうに笑う君を見て

俺も笑って

そのまま

また君の体温を感じに顔を近づける

ふざけたゲームの音すら気にならない程

君の唇から伝わる体温が心地よくて

もうとっくに失った自制心に

こんなん無理だから諦めて、俺。笑

と心で都合のいい解釈をして自分を納得させた


唇から頬、首へと小さくキスを落とすと

君の吐息はダイレクトに俺の耳へ届いて

急にギュッと回された腕

背中側を掴む手に力が入って

やたら肌触りのいい君が羽織っているパーカーの背中側から手を入れると

やたら肌触りのいいパーカー以上に肌触りのいい素肌に触れた...

捲し上げるように腕を少しづつ動かすと


『んー！！』

と俺の肩に顔を埋めたまま控えめに首を振る君


ハッと急に我に返って

逆の手で頭にポンポンと触れて


『やめとこっか』

と言うと












「あのね...倫也さんの...声...すき。
あと...手。あったかい。」



そう言った君は少し頭を上げると

俺の頬に小さくキスをした...







この子のこれは天然なのか

それとも策士かなにかなのか？

なんにせよ

俺の気持ちを弄ぶ天才か。



クスッと笑って

引き抜こうとした手でもう一度背中に触れて

その手をゆっくりと脇から胸へと伸ばすと柔らかな感覚が手のひらに触れて...





その瞬間に背中にまわされていた腕の力が抜けた

そして、なんだかやたらと押しつけられる胸と

のしかかるような重みを感じるんだが...







まさか...


腕をパーカーから抜いてゆっくりと君の肩を持って離してみると

赤ん坊のように頬を赤らめて

天使みたいな顔で

君は俺より先に夢の国に旅立っていた...

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